パラボラは執念の手作り! じっくりこだわって作られた魅力

一方、芳賀氏が「ずっと気になっていた」のが、三郎の頭部のパラボラアンテナ。これについては「まぁ、こんな小さなパラボラはないですからね」と秋本氏。特に機能のない飾りだが、イメージを重視して有り物の流用はせず、ラフスケッチと寸法を元にフルスクラッチ。クモの巣状のフレームは針金を1本ずつ溶接して仕上げたのだとか。

これを受けて芳賀氏は「やはり、譲ってもいいような部分までちゃんと作ってあるのが、でき上がった時の全体のバランスにつながってくるのかな。ブリキのオモチャのロボットともまた違った独特の雰囲気がある。部品の1個1個まで凝ってるんですよね」と絶賛。

秋本氏は「ヒマだったんでしょうね、当時は(笑)。世の中の流れがゆったりしていたんじゃないですか。今に比べたら」と答え、じっくりと開発に向き合えた当時の空気を伺わせた。

三郎の頭部を外してみせる秋本氏。岡本氏も外せるとは知らなかったとか

首チョンパでシュール? しかしこのパラボラの作り込みは本当にスゴイ!

後頭部のハッチをオープンすると、パラボラ回転用のモーターが見える

お話会後半には来場者からの質問タイムも設けられた。「1体作るのにいくらかかったか?」という質問には秋本氏が「当時の物価で10万円か20万円ぐらい」と回答。1960年代初頭の大卒初任給が1万5000~2万円程度なので、現在は約10倍として100万~200万円ほどか。ただしこれは材料費のみで、職人たちによる加工賃はその何倍もかかっているはずだ。1体の開発期間は意外と短く3カ月ほどだったと言う。

最後に岡本氏は、修復プロジェクトの今後の方針として「三郎はどれぐらいの時間で直せそうか?」とメンバーに質問。これに対し芳賀氏は「できれば操作系は当時の部品を使いたい」としつつも、同様の働きをする部品を揃えて当時風のメカを再現する、という見解を示した。それなら資金面さえクリアできれば1年でも可能、ということで、とりあえず「次のミスター・スパーク誕生日にお披露目」が三郎修復の目標とされた。

こうしてお話会は予定時間を過ぎる盛り上がりで終了。会場から秋元氏へのリスペクトの拍手とともに幕を閉じた。

お話会終了。秋本氏には会場から大きな拍手が贈られた