今後、AIが進化し、AIの得意な仕事が人間から置き変わることは間違いない。ビジネスにおいて、AIの得意な分野は何だろうか。営業活動の支援、業務の効率化、生産性を向上させる新しいインサイトの提供などにおいては、AIが既に、活用されている。また、AIは多種多様なハードウェアとソフトウェアに搭載され、腕時計、通信機器、自動車などにも活用されている。

調査会社のIDC Japanは、国内のAI市場について、2016年まではPoCが多かったが、2017年は実ビジネスへの適用が多くなり、急速に成長すると予測している。また、2018年以降の同市場は、金融などにおいて詐欺検出/分析、全業種において自動顧客サービスなどへのAI適用が進み、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は73.6%で成長し、2021年には2501億900万円の規模になると予測している。

  • AIシステムの市場予測 出典:IDC Japan(2017年11月15日プレスリリース)

主要業界のアナリストは、AI技術の利用が2017年に変曲点に達したと述べており、例えばガートナーはAIが多くのアプリケーションやサービスで活用され、企業におけるデジタル化への取り組みが2025年まで実質的な利益につながると分析している。AIがより大規模で高性能のハードウェアとソフトウェアの発展を牽引することで、企業は、今までより正確な予測や推奨を実現できるようになると予想される。

またAIは、アプリケーションの開発や導入を自動化できるため、革新的な製品やサービスの市場投入までの時間を短縮できる。一方、企業にとっては、特定の市場セグメントにターゲットを絞り、少数のカスタマイズしたブランドを顧客の嗜好に合わせて順次アップデートすることで、大量生産が不要になる可能性もある。

AIは既にビジネスに関連するデータの意味を理解しており、マーケティングの強化や業務の質の改善に役立てることができる情報の獲得や予測に貢献している。例えば、AIは消費者動向を予測できるレベルなので、より効果的なマーケティングが可能になっている。多くの企業がAIによる成果を実感することで、AIシステムを積極的に採用し、その推奨への信頼性が高まるだろう。

AIを搭載したシステムは、2018年にはさまざまな商用トライアルで性能が試され、より多くの都市の限定的な環境に導入されることになるはずだ。また、より多くのベンダーは、市場の需要に応え、AIによるデータ分析を可能にするビジネス関連ソフトウェアやサービスを提供することになる。アプリケーションに関しては、ブランドに興味を失う可能性がある(離脱する)顧客を予測したり、よりパーソナライズされた接客方法を推奨したりすることで、顧客の獲得や維持が容易になるだろう。

今後、AIはより多くの人が物事をこなすために使われ、より多くの企業が1次レベルの顧客サービスに採用するようになると予想される。これらのアプリケーションは、音声やタイピングによる会話をAIによって理解し、従来のソフトウェアよりも知的に人と交流することが可能になるはずだ。

AIシステムのトレーニングに使用できる現実世界の顧客データを既に保有している企業は、近い将来、先頭集団として他をリードすることになると思われる。ガートナーは、既に企業の59%がAI戦略に取り組んでおり、その他の企業もAIソリューションをテストしている段階にあると報告している。アジア太平洋地域では、企業がAIの活用について真剣に捉える時が来ているようだ。

著者プロフィール

松崎 亮


Appier Japan株式会社
Director, Enterprise Sales

2004年 コロラド大学ジャーナリズム&マスコミュニケーション学部卒。総合広告代理店の営業を経て、2011年グーグルジャパン入社。SMB を顧客とする第二広告営業本部の初期メンバーとして同本部の成長と組織作りに貢献。
その後、グーグルが買収したダブルクリックの日本の初期メンバーとして参画。DoubleClick Bid Manager (DSP) の拡販、DoubleClick Campaign Manager (第三者配信、DoubleClick Search (SEMツール、Google Analytics を含めたグーグルのアドテクソリューション営業に従事。
2017年に Appier Japan に入社。同社の人工知能をベースとしたオーディエンス予測分析プラットフォーム「Aixon(アイソン)」の日本営業統括責任者。