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2024年も、宇宙開発はさまざまな話題でもちきりだった。今年2025年も、世界中で新しいロケットの打ち上げや、月・惑星探査、有人宇宙飛行など、機体のミッションが目白押しである。とくに日本にとって、1955年のペンシル・ロケットの初の発射実験から70年、すなわち日本の宇宙開発70周年を迎え、それを祝うかのように多彩なミッションが予定されている。
ここでは、2025年に予定されているミッションの中から、特に注目したいものを紹介したい。
日本のロケット
H3の真価発揮、H-IIAの引退
2024年は、日本の新型ロケット「H3」が、試験機2号機で打ち上げに初めて成功し、2023年の失敗からのリベンジを果たすとともに、4号機まで3機連続で成功した。
2025年度には4機の打ち上げが計画されており、さらに固体ロケットブースター(SRB-3)を装着しない「H3-30形態」と、SRB-3を4本装着した最強バージョンの「H3-24形態」の初飛行も予定されている。
H3の真価は、こうしてSRB-3の装着数などを変えることで、さまざまな衛星の打ち上げに柔軟に対応できることにある。その能力を実証し、さらに高信頼性と低コストを両立させ、本格的な運用段階へ移行できるか、そして真に日本の大型主力ロケットとして活躍できるようになるか、2024年に続き挑戦の一年となる。
一方、そのH3にバトンを渡すように、現行の大型主力ロケット「H-IIA」の引退が近づいている。最終号機となる50号機は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」を搭載し、2025年度の打ち上げが予定されている。
2001年の登場から約四半世紀、その最後の姿は、すべて関係者、そして宇宙ファンにとって感慨深いものとなろう。
イプシロンSは試練の一年に
小型の主力ロケット「イプシロン」はここ数年、苦難のときが続いている。2022年10月の「イプシロン」6号機の打ち上げ失敗に始まり、2023年7月には改良型の「イプシロンS」の第2段モーターの地上燃焼試験にも失敗した。
2024年11月には、その失敗を受けて対策を施した第2段モーターの燃焼試験でふたたび爆発が起きた。開発は大きな壁に直面し、2024年度中に予定されていた初打ち上げも延期となった。
2025年は原因究明と対策がどこまで進むか、そして初打ち上げに向けた目処がつけられるかどうか、試練の一年となる。
民間小型ロケットの挑戦
2024年12月には、スペースワンの小型ロケット「カイロス」ロケット2号機が打ち上げに失敗した。ただ、同社は挑戦を続ける意向を示しており、原因究明を進めるとともに、3号機の打ち上げに向けた準備も進めている。2025年中にリベンジを果たせるか注目である。
また、インターステラテクノロジズ(IST)の「ZERO」は2024年度以降の打ち上げを目指している。早ければ2025年中に飛び立つ姿が見られるかもしれない。
海外のロケット
近年、世界中で新型ロケットの登場、世代交代が進んでいるが、2025年も新しいロケットがいくつも飛び立つ。
眠れる獅子「ニュー・グレン」
その筆頭を飾るのが、Amazon創業者ジェフ・ベゾス氏の宇宙企業ブルー・オリジンの「ニュー・グレン」ロケットである。
全長93m、直径も7mあり、かつて人を月へ送り込んだ巨大ロケット「サターンV」に匹敵する大きさをもつ。打ち上げ能力も、地球低軌道に45t、静止トランスファー軌道に13tと強大である。
さらに、第1段機体は回収して再使用できるようになっており、着陸時に滑空飛行するための大きな翼が取り付けられている点も目を引く。
打ち上げは早ければ1月12日の予定で、ケープ・カナヴェラル宇宙軍ステーションから飛び立ったあと、「ブルー・リング」と名付けられた上段ロケットの実証を行うことを目的としている。ブルー・リングは、実験機器などを搭載したり、複数の衛星をそれぞれ異なる軌道に投入したり、他の衛星に燃料を補給したりといった、さまざまな芸当ができる。また、1段目は大西洋で待機している船への着陸を試みる。
同社は、豊富な資金力と人材を背景に、その将来性が期待されている一方、その動きは慎重に慎重を重ねる、ゆっくりとしたものだった。はたして2025年は眠れる獅子が目覚めるのか注目である。
【訂正】初出時、ニュー・グレンの打ち上げは「早ければ1月10日」としていましたが、大西洋上の海況を考慮し1月12日へと延期されたため、当該箇所を更新しました(1月10日 14:50) |
「スターシップV」2のデビュー戦
2024年、宇宙開発における最大の話題は、スペースXの巨大宇宙船「スターシップ」の飛行試験だった。そして2025年も完成に向けて忙しく飛び回ることになる。
2025年最初のスターシップの飛行試験は日本時間1月14日以降に予定されている。さらに、この飛行は「スターシップV2」という改良型の機体のデビュー戦となる。V2では、機体の全長が伸び、推進薬タンクが25%大きくなることで打ち上げ能力が向上するほか、前部フラップが改良され、耐熱タイルも新たに設計された。コンピューターや通信機器も新しくなったという。
この飛行試験は、前回までの試験と同様に、完全な地球周回軌道には乗らないサブオービタル飛行をする。宇宙空間を飛行中には、衛星の放出試験を行うほか、再突入時には、水冷式の金属タイル試験も予定されている。前々回で成功し、前回は失敗した、1段目「スーパー・ヘヴィ」ブースターの、発射台でのキャッチも試みるという。
スペースXはまた、フロリダ州にもスターシップの発射施設を建設しており、早ければ6月にも使用が始まるとされる。2025年はテキサスとフロリダの両方から、スターシップが次々と飛び立つ光景が見られるかもしれない。
ミニ・スターシップな「ニュートロン」
6月には、小型衛星の打ち上げで高い実績をもつ「ロケット・ラボ(Rocket Lab)」の新型ロケット「ニュートロン(Neutron)」もデビューする。
同社が運用する「エレクトロン」は小型ロケットで、地球低軌道に約0.3tの打ち上げ能力をもっているが、ニュートロンは約13tと大幅に向上する。
さらに、再使用を念頭に置いた設計で、まるでミニ・スターシップとでもいうべきユニークな外見をしているなど、話題の多いロケットである。
復活の「アンタレス」
8月には、ノースロップ・グラマンの新型ロケット「アンタレス330」がデビューする。かつてのアンタレスはロシア製のロケットエンジンとウクライナ製の推進薬タンクを使っており、ロシアのウクライナ侵攻の影響で、2023年の打ち上げをもって引退した。
アンタレス330は、米ベンチャーのファイアフライ・エアロスペースと共同開発し、名前こそ同じなものの、エンジンもタンクも米国製になっている。
この初飛行では、「シグナス」補給船運用23号機(NG-23)を搭載して、国際宇宙ステーション(ISS)へ向けて打ち上げる。
スペースプレーン「スペース・ライダー」
垂直離着陸するロケットばかりで食傷気味の宇宙ファンにとっての大注目が、欧州宇宙機関(ESA)のスペースプレーン「スペース・ライダー」である。
スペース・ライダーは、胴体そのものが翼のように揚力を発生させて飛行できる「リフティング・ボディ」をしており、600kgの貨物を積んで、約2か月間宇宙を飛行し、さまざまな実験を行える。また、実験した成果物を地球に持ち帰ることができ、さらに機体を再使用することもできる。
現時点では9月以降に、小型ロケット「ヴェガC」で打ち上げられる予定となっている。
欧州小型ロケット競争
スペースワンやISTのような小型ロケットは、欧州でも開発が活発になっており、早ければ2025年中に初打ち上げを迎えるものが多い。
ドイツの「イザール・エアロスペース(Isar Aerospace)」は、小型・中型衛星打ち上げ用ロケット「スペクトラム(Spectrum)」を開発しており、ノルウェーのアンドーヤに建設した発射場から打ち上げを予定している。
同じくドイツの「ロケット・ファクトリー・アウクスブルク(RFA)」は、小型ロケット「RFA ONE」を、英国スコットランドのシェトランド諸島に建設された、サクサヴォード・スペースポートから打ち上げることを計画している。
(第2回へ続く)