6月下旬に、「ボーイングやエアバスで製造している民航機で使用しているチタン製品の品質問題」が報じられた。御存じの通り、チタンは航空機の製造に欠かせない素材だが、実はそれが昨今の世界情勢と密接に関わっている。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
中国メーカーから調達したチタンに問題が?
航空機で使用する部品、あるいは部品で使用する素材には、高い安全性や耐久性が求められる。だから、部品ごとに製造工程に関する記録をとるよう求められるし、素材そのものについても「そこら辺から適当に買ってくる」わけにはいかない。
ただ、その製造工程に関する記録、あるいは素材の出自や品質に関する書類が事実を正しく反映したものになっていれば良いが、それが虚偽のものだったらどうなるか。当然、部品や素材の信頼性に関わる大問題となる。
そして、ボーイングやエアバスに絡んで問題になったチタン素材の供給元として「中国航空工業集団(AVIC)の子会社、HYFC(AVIC Shaanxi Hongyuan Aviation Forging Co.)が供給元である」「HYFCから調達したチタンの生産元が確認できない」との話が報じられた。
その生産元については、「中国の宝鶏鈦業股分有限公司が、証明書類を提供した」との話が出た一方で、当の宝鶏鈦業股分有限公司が「供給元ではないといい出した」との話もある。
この辺の事実関係は、まだ今後の調査が必要になると思われるので、これ以上の言及は避ける。ただしなんにしても、出自不明の疑いがもたれる素材では、安心して使えたものではない。実際には問題がない素材かもしれないが、仮にそうだとしても、エビデンスに信頼が置けないのではダメである。