前回、対潜哨戒用のヘリコプターが曳航式のMAD(Magnetic Anomaly Detector)を使用している、という話を書いた。曳航する話があれば、下に吊るす話もある。さすがにこれは、空中に静止できない固定翼機では実現不可能で、ヘリコプターの専売特許となる。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
吊るすセンサーとは
ヘリコプターから吊るすセンサーといえば、ディッピング・ソナーである(日本語では吊下ソナーという)。ソノブイは使い捨てだが、ヘリコプターが搭載する吊下ソナーは使い捨てではない。使用するときだけ海中に降ろして、用が済んだら引き上げる。
ソナーの種類としてはアクティブ・ソナーに属する。つまり自ら探信して、その反射波が潜水艦に当たって返ってくるかどうか、聞き耳を立てる。本体は縦長の円筒形で、それを海中に降ろす。モデルによっては、傘の骨みたいな形でトランスデューサー(送受信機)を展開することもある。展開式にするのは、使用しないときはコンパクトに収容できるようにするため。
このソナー本体をケーブルで吊る仕組みになっていて、下ろすときにはケーブルをウインチのリールから繰り出す。ケーブルを巻き取ると逆になる。そのため、胴体下面に開口部があり、そこから吊下ソナーの本体が出てくる。当然、ウインチは機体にガッチリと固定しておかなければならない。
吊下ソナーは使い捨てではないから、長期的に見ると安上がり。その代わり、ソノブイみたいに多数を並べてバリアーを展開するような使い方はできない。ピンポイント捜索である。
吊下ソナーを降ろすためには床に穴を開ける必要があるので、そこに蓋を設けたとしても気密を保つのは難しそうだ。といっても、どのみちヘリコプターは、気密が問題になるほど高いところまで上昇しない。