前回は全周を見る話をしたので、次は、前方だけを見る話を。するとセンサー機器は機体の先頭部に取り付けることになる。本来、これは真っ先に取り上げるべきテーマではなかったかという気もしているが、それはそれとして。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
レーダーや光学センサーの事例が多い
前方を見るために用いられるセンサーというと、搭乗員の目玉に加えて、レーダーと光学センサーが挙げられる。
AESAレーダー
戦闘機なら、前方にいる敵機を捜索して、捕捉追尾・交戦するための、射撃管制レーダーを搭載する。以前はアンテナを可動式にして、ある程度の範囲で上下左右を走査できるようにしていたが、近年ではビームの向きを変えて電子的に首を振れる、AESA(Active Electronically Scanned Array)レーダーの利用が一般的になった。
「送信するビームの向きを変えられるのなら、アンテナ自体は固定式でいいよね」となるし、実際、AESAレーダーを搭載する戦闘機の大半はそうしている。可動部を減らす方が、故障の原因が減るので好ましい。
ところが、何事にも例外はあるものだ。AESAレーダーのアンテナ・アレイを、スウォッシュプレートと呼ばれる回転式の部材に取り付けた事例もある。その一例が、ユーロファイター・タイフーン向けに開発が進んでいるECRS Mk.2。ECRSはEuropean Common Radar Systemの略だ。
スウォッシュプレートは、機体の前後軸線を中心として回転する。ただし前面が斜めになっていて、そこにアンテナが取り付けられている。これを回転させるとアンテナ・アレイの向きが変わり、その分だけ捜索可能範囲を広げられますよという理屈。