前回、ターンアラウンドタイムの短縮にまつわる概論みたいなことを書いた。そして、戦闘機の分野におけるターンアラウンドタイムの短縮といえば、やはりサーブの戦闘機を取り上げないわけにはいかない。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
分散運用コンセプト「BAS90」
スウェーデンの戦闘機については、「有事の際には常設の空軍基地に頼らずに道路を利用した分散運用を実施」「そのためには短距離離着陸性能が必要」といった話がさんざん書かれている。そうした分散運用コンセプトは1950年代あたりからすでにあり、「BAS60」や「BAS90」といった名前がつけられていた。
ところが、短距離離着陸性能以外のところでどんな工夫がなされていたか、という話になると、途端に情報量が減ってしまう。「それなら、ちょっと調べてみようではないか」というのが、本稿を書いた理由。
戦闘機を分散運用するのは、前回にも書いたように、敵に捕捉されにくくする狙いがあるはずだ。少数のグループに分かれる方が目立ちにくい。そして、事前に用意してある地下格納庫、あるいは森林の中に機体を隠蔽する。
これは、貴重な戦闘機戦力を、できるだけすり減らさないようにするための工夫だが、それだけでは戦の道具としては不十分。数少ない戦闘機戦力を最大限に活用することも考えないといけない。そして前回に書いたように、機敏に動き回りながらゲリラ的に航空戦を展開しようとする観点からいっても、地上に留まっている時間は短くしたい。
ということで出てくるのが、ターンアラウンドタイムの短縮。つまり、任務飛行を終えて地上に戻ってきた戦闘機を、迅速に再出撃できるようにするということ。
その際には、機体の点検整備に加えて、燃料・兵装の再搭載が必要になる。サーブが公開している動画を見ると、JAS39グリペンでは「テクニシャン1名と整備員5名で、空対空戦闘装備なら10分間で再発進可能」と謳っている。