前回、既存の機体から部品や機器をはぎ取って利用する「共食い整備」の話を取り上げた。厳密にいうと、「共食い整備」は手持ちの機体同士で行うケースであり、部品や機器をはぎ取るための機体を別途調達するケースは「部品取り」といって区別する方がよいかもしれない。(「共食い整備」という言葉には、あまり良いイメージはなさそうだ)→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
余剰機が出ました。どうしよう?
といったところで、COVID-19のパンデミックである。人の動きが激減して、とりわけ民航各社の国際線は大打撃を受けた。ひところ、羽田空港などで「減便のせいで出番がなくなった機体」がたくさん、滑走路の周辺などに並べられていたのを覚えている方は多いと思う。
それがまた飛べるようになれば良いのだが、出番を失った余剰機を放出したり、新型機への代替を前倒ししたり、といった事例もあった。クルマと同じで、手持ちの余剰機を中古として誰かが買ってくれれば、懐に優しいし、手持ちの固定資産が減る。
しかし事情が事情だ。世界のどこに行ってもパンデミックの影響はあったわけだから、「ある国では余剰機が出ていても、別の国では機体が足りない」とはいかなかっただろう。普通に定期便の運航に使う機体の話として考えれば、そうなる。
ところが、売却先でも飛ばして運航に供する、いわゆる「耐空性売却」ではなく、部品取り用として売却するとなれば、話は違ってくる。
まず、耐空性売却では、相手はほぼエアラインに限られる。たまに、中古の民航機を購入して改造、軍用機に転用する事例があるが、レアケース。だから、これはあまりアテにできない。
それに対して部品取り目的の売却であれば、エアラインだけでなく、機体の整備・補修・オーバーホール、いわゆるMRO (Maintenance, Repair, and Overhaul)を専門に手掛ける企業も視野に入ってくる。
もちろん、中古機からはぎ取った部品や機器のコンディションが新品とまったく同じ、とは限らない。しかし実際のところ、(以前にも取り上げたことがあったと記憶しているが)所要の要件を満たしていれば、中古品でも使える。