前回は、2023年6月12日に成田空港に飛来したボーイングの技術実証機「エコデモンストレーター・エクスプローラー」(登録記号N8290V)と、同機を用いて試験が行われたMR-TBO(Multi-Regional Trajectory Based Operation)の概要を取り上げた。今回はこの両者について、もう少し掘り下げてみる。

  • 「エコデモンストレーター・エクスプローラー」を右側から。787-10は胴体がシリーズ最長のモデル 撮影:井上孝司

実機を飛ばしながら架空の状況を付与

MR-TBOの概要については、前回に取り上げたので、興味がある方はそちらを参照されたい。

もちろん、ここに至る前にシミュレーション試験をいろいろ実施していたはずだ。とはいえ、やはり実機を実際に飛ばしてみて初めて分かることはいろいろあるだろう。また、実機を飛ばして実証しなければ、関係各所からの信頼を得るのは難しい。それに多国間の共同案件だから、これも実証が必要になる理由の一つ。

MR-TBOの動作に関する説明は、キャビン側で行われた。機体の飛行経路を表示するディスプレイや、飛行情報などを表示するディスプレイが用意されていたが、これらがキャビン側にあれば、キャビンにいてもMR-TBOの動きを把握できるわけだ。

  • 左の画面では、ワシントン州のエバレットを飛び立った直後に、当初の予定よりも南側の経路に変更した様子が示されている 撮影:井上孝司

そこで「エコデモンストレーター・エクスプローラー」を用いて、天候、トラフィックの状況、空域閉鎖といった条件を考慮しながら最適な飛行経路を設定するプロセスを実地に試すことになったわけだ。なお、今回のフライトではSAF(Sustainable Aviation Fuel)の活用もうたっている。

「火山の噴火が発生」という架空の状況で飛行試験を実施

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