今や、水上戦闘艦でも戦闘機でも「対レーダー・ステルス設計は当たり前」という風潮だが、実はこれが、整備の仕事に大きく影響している。飛行機を安全に飛ばすための整備に加えて、ステルス性を維持するための仕事が増えるからだ。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
形状の維持とレーダー反射測定
対レーダー・ステルスとは、煎じ詰めると「レーダー電波が反射して、送信元に返って行かないようにする」こと。それを実現するための基本的な考え方は、「形状の工夫による、電波反射方向の局限」「素材の工夫による電波エネルギーの減衰・吸収」の2点となる。
本連載276回「航空機の吊るしものとひっつきもの」や連載「軍事とIT」の242回「ステルス性を持たせた航空機・艦艇を製作する」など、本誌ではすでに何回も「F-117Aで、ネジが3本、きちんと締まっていなくて頭が少し飛び出ていたために、レーダーにでっかく映ってしまった」話を書いている。飛行に差し支えがなかったとしても、レーダーにでっかく映ったのでは仕事にならない。
F-35では、機体が最初に完成したときに、電波暗室に入れてレーダー反射の計測を行っている。また、整備を行った後でレーダー反射の計測を行う場面もある。これは非ステルス機では必要のない作業だから、ステルス設計というだけで追加の仕事ができることになる。製造するときはもちろんのこと、製造した後の整備でも手間がかかるのがステルス機である。