航空機の整備作業については、以前に第159回、第160回、第162回で取り上げたことがある。今回からは、それら過去記事とは視点を変えつつ、航空機のメンテナンスに関わる話をいろいろ取り上げてみようと思う。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
整備のしやすい機体、しにくい機体
なにも航空機に限ったことではなく、自動車でも鉄道車両でも艦船でも同じだが、整備・点検を行いやすい設計と、行いにくい設計がある。
例えば、エンジン。昔は、エンジンを機体に取り付けたままで点検整備を実施していたが、それだとエンジンの点検整備を実施している間、機体はずっと非可動状態になる。予備のエンジンを用意しておいて、エンジンが大がかりな整備を必要とするタイミングになったところで交換してしまえば、機体はすぐに整備済みのエンジンを使って再稼働できる。
ただし、この考え方が能書き通りに機能するためには、エンジンの交換作業を迅速かつ容易に行える必要がある。エンジンの交換にやたらと時間がかかるようでは、「それなら機体に取り付けたままで整備しても同じ」ということになりかねない。
今の大形ジェット機であれば、エンジンは翼下にパイロンを介して吊るす形が多い。だから脱着・交換も比較的やりやすい。戦闘機の場合、以前にも書いたように、エンジンは後方にガバッと引き抜く形が基本で、これも迅速な交換が可能だ。というと話が逆で、迅速に交換できるように、後方にガバッと引き抜く設計にしている。
ところが昔のジェット戦闘機では、後部胴体を外さないとエンジンを交換できない、なんていう機体はザラにあった。すると、エンジンを脱着する手間に加えて、後部胴体を脱着する手間もかかる。しかも後部胴体には垂直尾翼や水平尾翼が取り付いているから、それらに付いている動翼を作動させるための索や油圧配管も脱着しなければならない。灯火や電子機器があれば、電気配線の脱着も必要になる。