このテーマでは、これまで「有人機」ばかり取り上げてきた。そもそも、本連載が基本的に有人機の話である。しかし、思うところがあって今回は、人が乗っていない飛びものを取り上げることにした。とはいえ、翼が生えていて、普通の飛行機と同様に飛べるから、飛行機の親戚ではあろう。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照。
湾岸戦争で名を上げたが
それがトマホーク巡航ミサイル。当初はBGM-109という制式名称だったが、今はプラットフォームごとに枝分かれしているようだ。
そもそも、どうしてトマホークを取り上げようと思ったか。このミサイルはいうまでもなく、1991年の湾岸戦争で多用されて、一気に有名になった。そして最近、日本政府が導入の意向を明らかにしたため、また、この名前が人の口に上るようになった。ところが、現行のトマホークについて「30年前のポンコツ」といっている人がいる。とんだ勘違いである。
弾道飛行ではなく、主翼の揚力を使って水平飛行を行うミサイルは、実は歴史が長い。第二次世界大戦のときにドイツが開発・実戦投入したV1号(フィーゼラーFi103)まで遡ることができる。
戦後も同種のミサイルがいろいろ作られ、中にはSM-62スナークのように大陸間飛行を企図した長射程のものもあった。しかしいずれも飛行高度が高く、ガタイが大きく、速度が速くない。これでは被探知性が高く、容易に撃墜されてしまうのではないかということで廃れて、弾道ミサイルに置き換わった。しかも、命中精度は決して高いものではなかった。高精度の測位・航法システムがないのだから無理もない。