第338回で、サフラン・グループの下で固定翼機向けのエンジンを手掛けているサフラン・エアクラフト・エンジンズ(旧SNECMA)を取り上げた。同社のCFM56エンジンとともに、A320neoに切り替わる前のA320シリーズで搭載可能なエンジンとして挙げられていたのが、IAE(International Aero Engines)のV2500。
IAEは国際合弁
IAEは、プラット&ホイットニー(米)、ロールス・ロイス(英)、日本航空機エンジン協会(日)、MTUエアロ・エンジンズ(独)、フィアット・アビオ(伊)の5者が、1983年に設立した合弁会社。当初の分担は以下のようになっていた。
- プラット&ホイットニー:燃焼室、高圧タービン
- ロールス・ロイス:高圧圧縮機
- 日本航空機エンジン協会:ファン、低圧圧縮機、シャフト
- MTUエアロ・エンジンズ:低圧タービン
- フィアット・アビオ:ギアボックス
日本航空機エンジン協会は日本における窓口で、ここを通じてIHI、川崎重工、三菱重工航空エンジンの3社が参画している。
後にフィアットが1996年、ロールス・ロイスが2012年に、事業から離脱した。高圧圧縮機とギアボックスは現在、スイスにあるプラット&ホイットニーの関連会社、PWAEI(Pratt &Whitney Aero Engines International GmbH)が担当している。
ジェット・エンジンの開発は、当たれば大きなビジネスになるが、開発には多額の資金と長い時間を必要とする。加えて、完成した後もさらなる改良が続く。それだけにリスクの大きい事業でもあり、下手をすれば、エンジンの開発失敗が会社をつぶす引き金を引くこともある(実際、そういうこともあった)。
そこで、複数のメーカーが集まって共同で事業を展開することで、リスクを共有・分担する。さらに生産も共同で行い、事業がうまくいったときの利益も分かち合う。という考え方ができた。基本的には、「 出資比率=ワークシェア=利益配分」とするのが筋であろうか。
そうした事例の一つがV2500。エアバスA320シリーズに加えて、マクドネルダグラス(当時)のMD-90でも採用、近年だとエンブラエルの軍用輸送機C-390で採用されている。
ちなみに、日本勢がV2500に関わるようになったきっかけは、FJR710エンジンの試験をイギリスのテストセルで実施したことにある。ところが、全日空がA320の採用を決めたときには、エンジンにV2500ではなくCFM56を選んだので、ちょっとばかり物議を醸したと記憶している。