タイムリーなことに(いや、こういうトラブルは起きない方がよいに決まっている)、「航空機を構成するパーツひとつが原因で、総点検」という事態が発生した。しかも単一機種にとどまらず、複数の機種が巻き込まれた。
マーチンベーカーの射出座席
『トップガン』など、戦闘機が活躍する映画を御覧になったことがある方なら、搭乗員が機体を捨てて脱出する場面に覚えがあるかもしれない。第二次世界大戦の頃は、キャノピーを開いた後は自力で飛び出していたが、それでは危ない。実際、機体から離れた直後に後ろからやって来た垂直尾翼とぶつかり、命を落とした戦闘機乗りもいる。
そこで考案されたのが、搭乗員を強制的に、座席ごと機体から放り出す射出座席。その話は第133回で取り上げたことがある。射出するには何かしらの動力源が必要であり、しかも急いで機体から離れなければならないから、高い加速力が求められる。戦闘機が性能の限界いっぱいで急旋回したときにかかるGよりも、射出座席で放り出されたときにかかるGの方が大きいというから大変だ。
動力源としては、火薬やロケットが用いられている。そして、その射出を行うための動力源である、CAD(Cartridge Actuated Device)というデバイスが問題になった。