今回からしばらく、ゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)社が壱岐空港で飛行試験を実施したガーディアン無人機(UAV : Unmanned Aerial Vehicle)のオペレーションに関わる話を取り上げてみたい。

筆者の連載「軍事とIT」でもガーディアンの話を書いているが、あちらは搭載機器やシステムの話が主体。対してこちらは、より「飛行機」としての話にフォーカスしてみる。

  • 飛行試験に飛び立つ前に、機体について説明してくれた、GA-ASI社のテリー・クラフト氏(アジア太平洋地域国際戦略開発担当副社長)

ガーディアンの概要

最初に、「そもそもガーディアンってどんな機体なの?」という話を書いてみる。この機体に限らないが、無人機は一般的な有人機と比べて「勝手が違う」ところがいろいろあって面白い。

GA-ASI社が手掛けた無人機はいろいろあるが、ガーディアンの先祖をたどると、ナット(Gnat)シリーズに行き着く。これを設計したのは、イスラエルからアメリカに移住してきたエイブ・カレム氏だ。

ナットから始まってプレデター一族につながる系譜については、回を改めて詳しく解説するが、いずれのモデルも、アスペクト比が大きい(つまり細長い)主翼を使っていて、航続距離の長さを特徴にしている。

また、ナット・シリーズから続く特徴として、全体配置がある。普通、レシプロ・エンジンでもターボプロップ・エンジンでも、プロペラで推進する機体はトラクター型といって、エンジンとプロペラを機首に配置して機体を「引っ張る」形が多い。

ところが、GA-ASI社のナットやプレデターは、機首はセンサー機器のために明け渡して、エンジンを尾部に搭載している。プロペラは尾端に付いているので、機体を「押す」形になる。これをプッシャー式という。

重量物のエンジンが後ろにあるので、機体の重心が後ろに寄って静安定性を損ねるのではないか、と気になるところではあるが、よくよく考えると、いまどきのジェット戦闘機だってエンジンは尾端に付いている。

そもそもスピードを求められる機体ではないので、ナット・シリーズやプレデター・シリーズのエンジンは馬力が小さく、そんなに大きくもなければ重くもない。それに、主翼の取付位置もかなり後ろに寄っている。

そして、機首にセンサー機材を置くことを考えると、エンジンとプロペラを後ろにまとめるほうが具合が良さそうだ。実はGA-ASI社の製品に限らず、プッシャー式のUAVは意外とある。

さて。まずナットが米中央情報局(CIA : Central Intelligence Agency)に採用されて、バルカン半島方面での情報収集に活躍した。そのナットに衛星通信アンテナを追加したのがプレデター。プレデターのエンジンをターボプロップ化したのがプレデターBである。

米空軍は、そのプレデターBをベースとして、電子光学センサーを搭載するとともに武装化した機体を採用した。それがMQ-9リーパーである。一方、同じプレデターBをベースにして、洋上監視・哨戒任務に適したセンサー機器を載せた非武装の機体がガーディアンである。

非武装の機体でも、搭載量が大きくなれば、搭載可能なセンサー機器を増やせるメリットがある。そして、一族が受け継いできた航続距離の長さは、長時間の常続監視に向いている。

しかも無人だから、乗っているパイロットが疲れたり、眠くなったり、トイレに行きたくなったりといった問題とは無縁だ。遠隔操縦するオペレーターはいつでも交代できる。

ガーディアンのディテール

ここから先は、現物の写真をいろいろ御覧いただこう。時にはビジュアル重視も良いだろう。

  • 壱岐空港に設けられた仮設格納庫に収まるガーディアン。機首が上に膨らんでいるだけでなく、左右にも膨らんでいて面白い形状だが、左右の膨らみは衝突回避用のレーダー(DRR : Due Regard Radar)が収まっている関係。MQ-9リーパーはDRRを持たない

  • 真横から。機首下面に突き出た灰色のターレットが電子光学センサー、主脚付近の胴体下面に突き出たフェアリングの中身がSeaVueレーダー。主翼の前方で胴体の上下に突き出ているのは、地上管制ステーション(GCS : Ground Control Station)から見通せる範囲内で使用するCバンド無線のアンテナ。主翼後方の胴体側面に空いている穴は、主脚収納部。人が乗っていないから与圧する必要はなく、がらんどうでも問題はない

  • 真後ろから。こうしてみると翼幅の広さが際立つ。現行モデルは翼幅20mだが、これを24mに伸ばして航続距離を延伸したモデルも計画されている

  • 翼端にはちゃんと、有人機と同様に翼端灯が付いている。ガーディアンは上下に翼端板が伸びているが、MQ-9リーパーは翼端板を持たない。プレデターB一族の中には、上向きのウィングレットを備えたモデルもある

  • 尾翼はV尾翼。プレデターAは下向きで「/ \」という配置だったが、大型化したガーディアン(プレデターB)は上向きに変わり、「\ /」となった。さらに、真下を向いた垂直尾翼も加わっている(方向安定性を確保するためだろうか)。その3枚の尾翼の後縁にそれぞれ操縦翼面が付いていて、ピッチ方向とヨー方向の操縦を受け持つ

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。