ロジックデバイスのプロセスの微細化が進むにつれて、BEOL(多層配線)工程の相互配線からの発熱がチップの信頼性を損なう可能性があるとの懸念が高まっている。
imecは、FEOL(トランジスタ形成工程)のロジックセルとの接合やパッケージング技術の境界条件を考慮して、先進的なBEOL構造における熱放散を正確に予測するモデリングのフレームワークを独自開発した。
高まるプロセス微細化に伴るBEOLの温度上昇懸念
BEOLは、クロックやその他の信号の分配や電源とグランドの供給、あるトランジスタから別のトランジスタに電気信号を転送することなどを担う複雑な配線スキームである。ローカル配線層(Mx)、中間配線層(My)、およびグローバル配線層(Mz)を含むさまざまな金属層で構成されており、その層数は最大15ほどであるが、Mx層は一般的に3~6層とされている。各層は金属による配線で構成され、金属間誘電体(層間絶縁膜)で囲まれている。これらは、金属で充填されたビア構造を使用して垂直に相互接続されている。
FEOLの寸法が縮小されていくにつれて、BEOLの寸法も縮小され、金属ピッチはより短くなり、金属配線の断面積も減少していくこととなる。結果として配線の複雑化とRC遅延の増大が、さらなる相互接続におけるスケーリングのボトルネックとなっていることがよく知られている。
しかし、半導体業界は最近、そうした従来の課題とは別に、BEOLにおける熱抵抗の増加とそれに伴う金属配線の加熱も懸念するようになってきた。BEOLにおけるエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションに関連する信頼性低下、ならびにFEOLにおける負バイアスの温度不安定性などに関連する信頼性低下が高温状態では加速されることとなるため、そうした温度上昇が集積回路の信頼性に影響を与える可能性が出てきたためである。
主な加熱源として想定されているのは、FEOLのアクティブ部品であるトランジスタであり、動作することでエネルギーを消費する。現在、ロジックセルは約10W/mm2で放散し、生成された熱の一部は隣接するBEOLに向かって拡散される。加えて、電力供給または信号分配のために流れる電流も導体である配線を温めることとなる。これはジュール加熱として知られる現象であり、スケーリングによって配線層の金属線とビアの電気抵抗率が上昇するため、テクノロジーノードが進むたびに悪化する。また、さらなる高い電流密度に対する要求と低誘電率誘電体の低い熱伝導率が問題をさらに増大させている点も注意する必要がある。
正確な熱放散予測フレームワークの必要性
従来、FEOLとBEOLの熱解析は単純化されたモデルを使用して個別に実行され、第1層(M1)に対するトランジスタの影響のみが考慮されてきた。しかし、このアプローチは今後のBEOLの技術進歩を考えると対象範囲が狭いといえる。今後、RC遅延の改善に向けて採用が検討されている技術の多くは、熱を拡散するための妨げになる可能性があるようなエアギャップの導入やBEOLの層数増加などといったものである。また、3Dテクノロジーの場合、BEOLが先進的なパッケージの全体的な熱抵抗に影響を与える可能性がある。さらに、ロジックの技術ロードマップにある裏面電力供給構造(電力供給ネットワーク全体をチップの表面側から裏面側に移動させた構造)や新しいトランジスタアーキテクチャ(ゲートオールアラウンド・ナノシートなど)の導入も金属配線の温度に影響を与える可能性がある。
これらの技術革新が熱伝播に及ぼす影響を捉え、狭いBEOL構造内で熱がどのように伝播するかについての基本的な理解を強化するには、より包括的なモデリングフレームワークが必要である。このフレームワークにより、温度上昇の最大の要因を特定し、新たなテクノロジーノードにおけるBEOLの熱抵抗がどのように変化するかを予測し、熱を意識した相互接続のための設計を推奨できるようになるからである。
後編となる次回は、imecの研究チームが開発した先端BEOL構造の温度上昇を予測するサーマルモデリングを具体的に紹介したい。
Melina Lofrano
Xinyue Chang
Herman Oprins
Zsolt Tokei