前回まで3回にわたり既存PDFの最適化について説明しましたが、今回は自分でPDFを作成する際に選択する「PDF設定」の作成について説明します。オリジナルの「PDF設定」を作成すれば、作成後に最適化しなくても、PDF作成時に好みの品質のPDFを作成できるようになります。

「PDF設定」をカスタマイズして作成

第1回で、PDF作成時の「PDF設定」の選択について説明しました。PDFの品質やファイルサイズに関係する「PDF設定}ですが、プリセットされている項目をカスタマイズして、オリジナルの「PDF設定」として登録して使うことができます。

今回は、「標準」プリセットをカスタマイズして、画像の解像度を「100ppi」にダウンサンプルし、すべてのフォントを埋め込むという設定の「PDF設定」を作成してみましょう。

「PDF設定」を作成する手順はいくつか方法があるのですが、今回はMicrosoft Wordの「Acrobat」リボンから行ってみます。

Wordを起動します。「Acrobat」リボンを表示し、[環境設定]をクリックします。

Wordを起動し、「Acrobat」リボンの[環境設定]をクリックする

「Acrobat PDFMaker」ダイアログボックスが表示されるので、「PDF設定」で「標準」を選択します。これがカスタマイズの基礎となるPDF設定となります。選択したら[詳細設定]ボタンをクリックします。

「PDF設定」で「標準」を選択し[詳細設定]ボタンをクリックする

「Adobe PDF設定」ダイアログボックスが開きます。この画面で、PDF変換時のさまざまな設定を行います。はじめに表示されているのは、左側のメニューリストの「一般」の設定画面です。この画面では、PDFの互換形式などを設定します。ビジネス用途であれば、初期設定のままでかまいません。

「Adobe PDF設定」ダイアログボックス。この画面で[PDF設定]の設定を行う

「画像」の設定

次に、画像の解像度の設定をしましょう。左側のリストから[画像]をクリックします。右側が「画像」の設定画面に変わります。これは、3回目の「PDFファイルの最適化設定をマスターする(1) - 画像設定編」で説明した画面の内容と同じです。今回は、解像度の数値だけを変更します。「カラー画像」と「グレースケール画像」は、「100ppi」、白黒画像は「300ppi」に設定します。「次の解像度を超える場合」の解像度は、それぞれの解像度に1を加えた解像度に設定しましょう。

「画像」の設定画面で、解像度の数値だけを変更する

「フォント」の設定

続いて、フォントの設定をしましょう。左側のリストから[画像]をクリックします。右側が「画像」の設定画面に変わり、フォントの埋め込みの設定を行えます。

「すべてのフォントを埋め込む」にチェックが付いているのですべてのフォントが埋め込まれますが、右下の「常に埋め込まないフォント」にフォントが登録されている場合は、そのフォントは埋め込まれなくなります。

元の「標準」プリセットでは、「常に埋め込まないフォント」にフォントが登録されているので、登録されているフォントを削除して、すべてのフォントが埋め込まれるようにしましょう。

「常に埋め込まないフォント」の最上段のフォントをクリックして選択します。リストをスクロールして再下段まで表示し、再下段のフォントをShiftキーを押しながらクリックするとすべてのフォントを選択できます。すべてのフォントを選択したら[削除]ボタンをクリックして削除します。 

「フォント」の設定画面で「常に埋め込まないフォント」を削除する

「常に埋め込まないフォント」が空欄になったので、すべてのフォントが埋め込まれるようになりました。「カラー」「詳細」「規格」の設定は、「標準」プリセットの設定を変更せずにそのまま使います。

設定が完了したのでダイアログボックス下部の[名前を付けて保存]ボタンをクリックします。

「常に埋め込まないフォント」が空欄になったのを確認して[名前を付けて保存]をクリック

「名前を付けて保存」ダイアログボックスが表示されるので、「ファイル名」にPDF設定の名称を入力(ここでは「標準100ppi」としました)して[保存]ボタンをクリックします。

「ファイル名」にPDF設定の名称を入力し[保存]ボタンをクリック

これで、新しいPDF設定のプリセットとして追加登録されました。「Adobe PDF設定」ダイアログボックスに戻るので[OK]をクリックしてダイアログボックスを閉じます。

「Acrobat PDFMaker」ダイアログボックスに戻ると、「PDF設定」の欄に作成したPDF設定が選択されています。リストにも追加されているので確認してください。なお、追加されたPDF設定は、Microsoft OfficeのAcrobatリボンからのPDF作成以外でも利用できます。

新しいPDF設定が追加された

PDF設定の設定内容の編集

追加したPDF設定は、内容を編集できます(はじめからプリセットされているPDF設定は変更できません)。「Acrobat PDFMaker」ダイアログボックスで、編集するPDF設定を選択してから[詳細設定]ボタンをクリックしてください。「Adobe PDF設定」ダイアログボックスが表示されたら設定内容を変更し、[OK]をクリックしてください。

PDF設定の名称変更、削除

追加したPDF設定の名称を変更したり、削除するには、「Adobe PDF設定」ダイアログボックスで[名前を付けて保存]ボタンをクリックし、「名前を付けて保存」ダイアログボックスで対象となるPDF設定を右クリックして、削除するには「削除」、名称を変更するには「名前の変更」を選択してください。

その他の「PDF設定」の作成方法

「PDF設定」は、他の方法でも作成できます。なお、「Adobe PDF設定」ダイアログボックスが表示されてからの手順は、前述した「Acrobat PDFMaker」からの手順と同じです。

「印刷」ダイアログボックスの「Adobe PDF」から作成

どんなアプリケーションでも、印刷時のプリンターを「Adobe PDF」に選択するとPDFに変換できます。その際、「印刷」ダイアログボックスの[詳細設定]または[プロパティ]をクリックすると、「Adobe PDF設定」タブのあるダイアログボックスが表示され「PDF設定」を選択できます。このダイアログボックスで「編集」ボタンをクリックすると、「Adobe PDF設定」ダイアログボックスが開き、選択したPDF設定を元にカスタマイズしてオリジナルの「PDF設定」を作成できます。

「印刷」ダイアログボックスでプリンターに「Adobe PDF」を選択し[詳細設定]をクリック

「PDF設定」でカスタマイズの元になるプリセットを選択し[編集]をクリック

Acrobatから作成

Acrobatを起動し、[編集]メニューから[環境設定]を選択します。「環境設定」ダイアログボックスが表示されるので[分類]から[PDFへの変換]を選択します。ダイアログボックス右側が「PDFへの変換」に変わるので「Microsoft Office Word」を選択します(「Microsoft Office Excel」でも「Microsoft Office PowerPoint」でもかまいません)。下に表示された[設定を編集]ボタンをクリックすると、「Adobe PDF設定」ダイアログボックスが表示されます。このダイアログボックスで「編集」ボタンをクリックすると、「Adobe PDF設定」ダイアログボックスが開き、選択したPDF設定を元にカスタマイズしてオリジナルの「PDF設定」を作成できます。

[分類]で[PDFへの変換]を選択し、右側のリストから「Microsoft Office Word」選択して[設定を編集]をクリック

「PDF設定」でカスタマイズの元になるプリセットを選択し[編集]をクリック

Acrobat Distillerで作成

Acrobat Distillerは、Acrobatをインストールすると一緒にインストールされるアプリで、おもにPDFの変換だけを行います。このDistillerでも「PDF設定」を作成できます。

Acrobat Distillerを起動します。Distillerは、簡単な画面しか表示されません。「デフォルト設定」で「標準」を選択し、[設定]メニューから[Adobe PDF 設定の編集]を選択します。「Adobe PDF設定」ダイアログボックスが開き、選択したPDF設定を元にカスタマイズしてオリジナルの「PDF設定」を作成できます。

Acrobat Distillerを起動し、「デフォルト設定」で「標準」を選択

[設定]メニューから[Adobe PDF 設定の編集]を選択

なおAcrobat Distillerでは、[設定]メニューから[Adobe PDF 設定の削除]を選択すると、登録した「PDF設定」を削除できます。はじめからプリセットされているPDF設定は削除できません。