前回は自分でPDFを作成する際のPDF設定について話しましたが、PDFの作成部門と配布部門が異なる場合もあるでしょう。連載2回目は、他ユーザーが作ったPDFを簡単にファイルサイズを縮小する方法を紹介するとともに、PDFファイルのサイズについてもう少し詳しく説明します。

既存PDFのファイルサイズを小さくする

ビジネスの現場では、PDFの配布担当者と制作担当者が異なることもあると思います。商用印刷物を制作する部門等では印刷入稿用にPDFを使用しています。商用印刷用のPDFは、標準規格としてPDF/X1aやPDF/X1aをベースにカスタマイズしたPDF設定を使うことが多いのですが、PDF/X1aは画質が劣化しないように設定された規格なのでファイルサイズが大きくなる傾向にあります。

このように、制作者から配布用に用意されたPDFのファイルサイズが大きい場合でも、Acrobatを使用すると、既存のPDFのファイルサイズを小さくすることができます。

Acrobatでファイルサイズを小さくするPDFを開き、[ファイル]メニュー→[その他の形式で保存]→[サイズが縮小されたPDF]を選択します。[ファイルサイズを縮小]ダイアログボックスが表示されるので、[互換性を確保]で作成するPDFのAcrobat互換バージョンを選択します。あとは、ファイル名を付けて保存すれば、ファイルサイズが縮小されたPDFができあがります。なお、すでに縮小化したPDFに実行しても、大きなファイルサイズ縮小はできません。

[ファイルサイズを縮小]ダイアログボックスで選択するAcrobatの互換性は、作成するPDFを問題なく開けるバージョンの指定です。PDFは実は内部的にはさまざまな改良が加えられており進化しています。そのため、古いAdobe Readerでは、新しいバージョンのPDFが開けないことや、新しい機能が無視されることがあります。

Adobeが配布しているPDF閲覧ソフトであるAdobe ReaderはAcrobatのリリースと同時に最新バージョンが無償提供されますが、すべてのユーザーが最新バージョンを使用しているわけではありません。そのため、ある程度の互換性を保持するほうがベターです。

しかしダイアログボックスには、最新バージョンのほうがファイルサイズが大幅に減少すると記述されています。ファイルサイズと互換性のどちらを優先させるかは難しい判断です。そこで試しに、すべてのバージョンで保存してみました。使用したPDFは、セキュリティやインタラクティブ機能などを使っていない元ファイルから作成しただけのPDFです。結果ですが「Acrobat6.0およびそれ以降」からはそれほどファイルサイズに差が出ませんでした。ですから互換性は「Acrobat6.0およびそれ以降」以降のバージョンを選択しておけばいいと思います。

[ファイル]メニュー→[その他の形式で保存]→[サイズが縮小されたPDF]を選択します。

[ファイルサイズを縮小]ダイアログボックスでAcrobatの互換バージョンを選択

なお、古いバージョンで保存したときに、互換性が保持できない場合は警告ダイアログボックスが表示されます。警告ダイアログボックスが表示されたら、「Acrobat7.0およびそれ以降」を選択して保存し直してください。警告ダイアログボックスが出なくなるまで順番に新しいバージョンで保存していけばいいかと思います。

ちなみに、旧バージョンのリリース時期ですが、Acrobat6.0は2003年5月、Acrobat7.0は2004年12月、Acrobat8.0が2006年11月です。

互換性に関しての警告ダイアログボックス。このようなダイアログボックスが表示されたら、新しい互換バージョンで保存し直す

PDFのファイルサイズの内容をチェックする

[サイズが縮小されたPDF]を実行すると、PDFのファイルサイズを縮小できます。では、PDFのファイルサイズがどのように縮小されたかを確認してみましょう。

Acrobatで内容をチェックするPDFを開き、画面左のナビゲーションパネルのグレー部分を右クリックしてメニューから[コンテンツ]を選択します。 

ナビゲーションパネルにコンテンツパネルが表示されるので、オプションメニューのアイコンをクリックして、メニューから[容量を調査]を選択します。

「容量の調査」ダイアログボックスが表示され、PDF文書のファイルサイズの構成要素のファイルサイズ(バイト)と全体の割合(パーセント)が表示されます。

画面左のナビゲーションパネルのグレー部分を右クリックしてメニューから[コンテンツ]を選択

オプションメニューのアイコンをクリックして、メニューから[容量を調査]を選択

「容量の調査」ダイアログボックスに、ファイルの構成が表示される

「パーセント」を見てわかるように、サンプルで使ったPDFのファイルサイズの95%近くは「画像」が占めています。次に多いのが「フォント」です。

[サイズが縮小されたPDF]を実行してファイルサイズを縮小したPDFも見てみましょう。「画像」のファイルサイズが激減していることがわかります。

[サイズが縮小されたPDF]を実行してファイルサイズを縮小したPDFの「容量の調査」ダイアログボックス

もっと細かく設定して縮小するには

[サイズが縮小されたPDF]は、簡単な操作でファイルサイズを小さくできるのですが、互換性以外の設定は省略されているため、PDF文書内の画像が劣化しすぎる可能性もあります。

Acrobatでは、もっと細かく設定をしてファイルサイズを縮小することもできます。これについては次回紹介します。