衛星画像で世界にアクセス!
今やニュースで見かけない日はない衛星画像。
ロシアによるウクライナ侵略が始まる直前、国境地帯に集結しているロシア軍を捉えた米国Maxarの衛星画像で切迫する状況が見えていた。
さまざまな事情で現地に近づくことができない場所の情報を詳細にとらえて分析できる衛星画像だが、地上分解能(解像度)が1m以下の超高解像度(Very High Resolution:VHR)衛星ともなると「安全保障分野のアナリストや大手の報道機関のもので、一般には縁がない」と思うのではないだろうか。
実は、VHR衛星画像を比較的少額の100ユーロ程度から「サブスク」で購入する方法がある。フランスのエアバス・ディフェンス&スペース(エアバスD&S)が運用する「Pleiades(プレアデス)」衛星の画像は分解能0.5mと、米Maxarの衛星に続く商用VHR衛星画像の代表格だ。
このプレアデス衛星の画像は、欧州の衛星データ配信プラットフォーム「Sentinel-hub(センチネル・ハブ)」を通じて個人でも購入できる。
本記事では、前半の記事で購入したプレアデス画像を元に世界のロケット射場の今を紹介する。後半の記事では、購入契約の方法からほしい場所の画像を入手する方法、画像のライセンスなどについて解説する。
衛星画像から見る世界のロケット射場
プレアデスの画像は、「クォータ」と呼ばれる定額の購入単位を100ユーロ/1クォータから利用できる。1クォータで取得できる画像はおよそ11.7平方km程度。これまで撮影されたもののアーカイブから選ぶ方式で、撮像リクエストを出す「タスキング」はできない。
プレアデスは2機の衛星が交互に周回していて、地球上の任意の地点を毎日撮影可能ではあるものの、必要な場所の衛星画像がアーカイブに存在するかどうかはエアバスD&S次第だ。何か重要な事件が起きているのではないかぎり、1カ月から数カ月に1回程度の画像が見つかる程度だ。
とはいえVHR衛星画像というこれまで個人では手が届かなかった世界にアクセスできるだけで、世界を知る力は大きく広がる。まずは、プレアデス衛星画像で世界のロケット射場の気になる動きを見てみよう。
衛星打ち上げ直前。イラン「イマム・ホメイニ宇宙センター」
画像は2022年6月4日にプレアデスが撮影したイランの衛星打ち上げ施設、「イマム・ホメイニ宇宙センター」の円形射点の様子だ。
トランスポーターに搭載されたロケットが射点中央の発射棟に設置される準備中と見られている。AP通信は6月14日に撮影された同じ射点Maxarの画像を掲載し、「Zuljanah(ズルジャナ)」ロケットの打ち上げ準備の可能性を示した。
イランは2020年4月に衛星を軌道に乗せることに成功したと発表し、2021年12月末に打ち上げを行ったがこのときは衛星が軌道に到達しなかったと説明した。2022年2月末にも打ち上げ準備があったようだが打ち上げに至らず、射点で何らかのロケットの損傷があったと見られている。
イラン北部のセムナーン州にあるイマム・ホメイニ宇宙センターでは2003年の開設以降、ロケット打ち上げが行われてきた。発射場南側の円形の射点と、新設された大型の射点があり、開放的な円形の射点は、作業中の車両などの様子から打ち上げ準備をうかがうことができる。
セムナーン州は2019年3月に豪雨と鉄砲水の被害で射点も土砂やがれきで覆われたことがあった。今年4月から5月にかけて欧州の光学地球観測衛星「Sentinel-2(センチネル2)」が撮影した画像を比較すると、4月24日を挟んで射点が土砂で覆われていたことがうかがえる。射点の清掃の様子からも打ち上げ活動を推測することができ、2023年までに7機の衛星を打ち上げるというイランの宇宙開発計画をモニタリングできる。
そして6月26日、ズルジャナロケットの2回目の打ち上げが実施されたとイラン国営テレビが報じた。打ち上げが成功したかどうかは明らかにされていないが、「弾道飛行が行われた」という表明は、軌道に乗らなかったことを示唆しているとの見方もある※1。
文中注釈
※1:https://twitter.com/Tasnimnews_Fa/status/1541032087880404992