近年注目を集めるようになったRPA。業務を効率化させるために導入を検討している企業も多いのではないだろうか。しかし、いざ導入しようと思っても、どの業務をどのように自動化させればいいのかなかなかわからないもの。そこで、本連載では、RPAに関するコンサルティング事業を展開しているオデッセイ 代表取締役社長の秋葉尊氏が、RPAを上手に活用するための方法を伝授していく。第1回では、まず、なんでもできると思われがちなRPAについて、できること/できないことを紹介する。

なぜ今RPAが注目されるのか?

昨今、RPA(Robotic Process Automation)に対する関心が高まっている。弊社でもRPAのセミナーを開催すると、100名程度収容できる会場が瞬く間に予約でいっぱいになってしまうほどだ。そのぐらい世間は「RPA」というキーワードに敏感になっている。

なぜなのだろうか? 毎日のように新聞紙面をにぎわす「AI」や「ロボット」「IOT」などの先進技術に代表される「第4次産業革命」への関心の高さからなのだろうか? もしくは、政府が主導する「働き方改革」や、その背景となっている「労働人口の急速な減少」の影響だろうか? はたまた、業務の効率化において従来の情報システムには限界を感じてしまったからなのだろうか?

いずれも間違いではないと思うが、私は「RPA」という新技術が、これまで業務の効率化を進めるうえで諦めていたことを解決してくれるという期待感の表れだろうと考えている。

「RPA」を導入すれば、従来では考えられないぐらいの業務の効率化が図れるかもしれない。面倒な仕事は全部ロボットがやってくれるようになるのかもしれない。人手不足で忙しい毎日を変えてくれるのかもしれない。とてつもない企業変革を実現できるかもしれない――。

まさにそういうことなのだろう。変化を求めている企業にとって、夢を実現するツールが出現したという理解なのだ。

RPAで一体何ができるのか?

すでに知っているという読者も多いかもしれないが、まずRPAで実現できることは何かを、整理してみたい。

ソフトウェアロボットが得意とするのは定型業務の代行

日々、人間はさまざまなシステムやツールを使用して業務を進めている。その中には毎日、毎週、毎月といった頻度の違いこそあれ、同じシステムやツールを活用して定型的に行っている業務も多いはずだ。

たとえば、毎月月初に業務システム(人事、販売、会計など)からデータをダウンロードして、Excelで表やグラフに加工したのち、関係者にメールで送信する業務。データをダウンロードしてExcelで加工するぐらいまでは、マクロなどを活用すれば対応は可能と思われるが、まったく人間を介さずに処理を進めることはできない。その結果をメールで送るとなればなおさらだ。

RPAはこのような業務もお手のもの。「この情報であれば誰にメールするべきか」という判断も含め、無人で対応することができる。よく「マクロと大差ないのでは?」との声を聞くが、マクロとRPAの最大の違いは、システムやツールを横断して人間の手を介さず対応できる点だ。まさしく、人間が実際に行っている業務を、そのまま代行することが可能なのである。

RPAで対応できない業務もある

RPAが苦手とする業務を挙げるとすれば、それは都度考えて判断する、もしくは人間のように何かに配慮して判断することが求められる業務だ。あらかじめロジックとして決められる判断であれば、現時点でのRPAでも対応は可能。現時点と付け加えたのは、RPAがまだ発展途上にある技術であるためだ。

日本RPA協会の発表によれば、現時点のRPAは「Class1」。次期レベルの「Class2」では、AI(ディープラーニング)などとの連携によって、非定型業務を一部自動で代行できるようになるとしている。また、当面の最終段階である「Class3」では、高度なAIと連携し、業務プロセスの分析・改善から意思決定まで自動的に対応ができる「高度な自立化」を果たすとされている。現時点の見込みでは、2021年頃にはこのレベルに到達するとのことなので、そう遠い話でもない。「Class3」になれば、RPAで対応できない業務は、かなり限定的になりそうである。

RPAはどの業務に活用すべきなのか?

RPAで何ができるのかが分かれば、次は「どの業務をRPA化すべきか?」の検討だ。まさにRPAを導入するうえで非常に重要なフェーズである。

この検討でRPA化の導入効果が大きく左右すると言っても過言ではない。この検討においては、2つの選択肢がある。1つは、日頃手間がかかっていると感じている業務(タスク)を、単純にRPA化しようというアプローチ。もう1つは、現状の業務フローを整理したうえで、RPA化後の業務フローを検討し、業務プロセスレベルでどの業務をRPA化することが効果的かを検討してから導入するアプローチだ。いずれも間違いではないが、どちらが効果的かを考えれば、当然後者である。

RPAは文字通りProcess Automationなので、業務プロセスレベルでの自動化を実現するツールである。タスクレベルの自動化では、導入効果が半減してしまう可能性もあるのだ。

投資できる金額の都合もあるだろうが、本格的にRPAを導入してROIの最大化を期待するのであれば、業務プロセスレベルでのRPA化の検討を強くお勧めする。

次回は、RPAの検討や導入を進めていくうえでの留意点について整理してみたいと思う。

著者プロフィール

秋葉尊

秋葉 尊

オデッセイ 代表取締役社長

大学卒業後、NECに入社。
20年にわたり中堅企業や大企業に対するソリューション営業やマーケティングを担当。
2003年5月にオデッセイ入社、代表取締役副社長に就任。
2011年4月代表取締役社長に就任、現在に至る。

ATD(Association for Talent Development)タレントマネジメント委員会メンバー、HRテクノロジーコンソーシアム会員、日本RPA協会会員を務める。