PowerPointには、各スライドにナレーション(音声)を録音する機能も用意されている。この機能を使って「音声付きの動画ファイル」を作成することも可能だ。連載の最終回となる今回は、ナレーション付きでスライドショーを自動進行させたり、スライドを使って動画ファイルを作成したりする方法を紹介していこう。
ナレーションの録音
まずは、スライドに「ナレーション」(音声)を追加するときの操作手順から解説していこう。パソコンにマイクを接続して設定を済ませたら、PowerPointを起動し、以下のように操作する。
ナレーションを録音するときは、「スライドショー」タブを選択し、「スライドショーの記録」→「先頭から記録」を選択する。
すると、以下のような画面がフルスクリーンで表示される。これが「ナレーションの録音画面」となる。録音を開始するには「記録」ボタンをクリックすればよい。
3、2、1、とカウントダウンが始まり、0の時点から録音の開始となる(0の数字は画面に表示されない)。
あとは、マイクに向かって発表内容を説明しながら、スライドショーを進めていくだけ。「次のスライド」へ進めるときは、スライド上をマウスでクリックするか、もしくは画面右端にあるアイコンをクリックすればよい。
もちろん、各スライドに指定されているアニメーションを実行することも可能だ。マウスのクリックによりアニメーションを開始する場合は、そのタイミングも一緒に記録される仕組みになっている。
「最後のスライド」まで進めた後、さらにマウスをクリックすると、「スライドショーの最後です。クリックすると終了します。」と書かれた黒い画面が表示される。以上で、ナレーションの録音は完了。画面をクリックすると「ナレーションの録音画面」が閉じ、通常の編集画面に戻る。
ナレーションの録音が済むと、各スライドの右下に「スピーカー」のアイコンが表示されているのを確認できるはずだ。このアイコンは「ナレーション有り」を示すアイコンとなる。
ナレーションを録音するときの注意点
前述したように、ナレーションの録音そのものに特に難しい操作は見当たらない。普通にスライドショーを実行するときと同じように、スライド表示やアニメーションを進めていくだけで録音を完了することができる。
それよりも、噛まずに、ハキハキとした口調でナレーションを読み上げることの方が難しい、という方が多いであろう。これについては本連載の守備範囲を超えるため、的確なアドバイスを送ることはできない。どうしても上手く話せないときは、プレゼンが上手な同僚に協力してもらう、プロの声優に依頼する、などの対応が必要になるだろう。
そのほか、PowerPointならではの注意点も覚えておく必要がある。PowerPointの録音機能は、次のスライドへ進めるときに「一瞬だけ録音が途切れてしまう」という弱点がある。このため、「次のスライド」へ切り替えながら、スライドまたぎで話を続けるのは避けるべきだ。
特に「画面切り替え」を使って「次のスライド」へ進めている場合は、「画面切り替え」が実行されている間、録音が中断されてしまうことに注意しなければならない。
「次のスライド」へ切り替えるときはいちど話を止めて、少し間を空けてからマイクに向かって話し始める必要がある。より確実性を求めるなら、各スライドの経過時間が1秒を過ぎたあたりから、ナレーションの読み上げを再開するとよいだろう。
録音したナレーションの確認
続いては、録音したナレーションを確認(再生)するときの操作手順を紹介していこう。
スライドの編集画面に表示されている「スピーカー」のアイコン上にマウスポインタを移動すると、ナレーションを再生するためのコントロールパネルが表示される。ここで「再生」ボタンをクリックすると、各スライドに録音されているナレーションを再生できる
プレゼンテーション全体を通してナレーションを確認したいときは、「F5」キーを押してスライドショーを実行すればよい。
画面では上手く伝えられないが、ナレーションを再生しながらスライドショーが実行されていく様子を確認できるだろう。録音時に「スライドを切り替えたタイミング」や「アニメーションを開始したタイミング」も再現されるため、全自動でスライドショーを進めることが可能となる。
もちろん、記録したナレーションやタイミングを無効化してスライドショーを実行する方法も用意されている。この場合は、以下に示したチェックボックスをOFFにしてからスライドショーを開始すればよい。
ナレーションの撮り直し
ナレーションを再生してみた結果、「もういちど録音をやり直したい・・・」と思うこともあるだろう。この場合は、スライド単位でナレーションを撮り直すことが可能だ。
まずは、ナレーションの録音をやり直すスライドを選択する。続いて、「アニメーション」タブを選択し、「スライドショーの記録」→「現在のスライドから記録」を選択する
すると、現在のスライドを基点に「ナレーションの録音画面」が表示される。あとは「記録」ボタンをクリックして録音を開始するだけだ。
なお、「記録」ボタンをクリックすると、そのスライドに録音されていた「既存のナレーション」は削除される仕様になっている。各スライドにおけるナレーションの録音は、基本的に「上書き」となることを覚えておく必要があるだろう。
ナレーションの録音が終わったら、画面左上にある「停止」ボタンをクリックする。この時点で「次のスライドへ切り替えるタイミング」も更新される。
通常のスライド編集画面に戻るときは、画面右上にある「×」をクリックすればよい。上手に録音できたら、忘れないうちにPowerPointファイルの「上書き保存」も実行しておこう。
他の編集作業と同じように、「録音したナレーション」を保存するには、ファイルの「上書き保存」または「名前を付けて保存」を実行しておく必要がある。保存せずにPowerPointを終了すると、録音したナレーションが削除されてしまうので注意しておこう。
ナレーションとタイミングの削除
念のため、各スライドに記録した「ナレーション」や「タイミング」を削除する方法も紹介しておこう。
この操作は、「アニメーション」タブを選択し、「スライドショーの記録」→「クリア」から「削除したい内容」を選択するだけ。これで、各スライドまたは全スライドの「ナレーション」や「タイミング」を削除できる。
その他の機能
続いては、「ナレーションの録音画面」に用意されている各種機能について簡単に紹介しておこう。
「ナレーションの録音画面」には、各スライドの「ノート」を表示する機能が用意されている。このため、発表用原稿を見ながらナレーションを録音していくことも可能となっている。
ただし、ノートの表示領域が小さく、スクロールしながら原稿を読み上げていく必要があるため、使い勝手はあまりよくない。そればかりか、トラブルの原因になってしまう恐れもある。
というのも、ノートの領域外にマウスポインタを置いた状態でマウスホイールを回転させると、「ノートの文字のスクロール」ではなく、「次のスライドへ進める操作」になってしまうからだ。このような操作ミスを犯すと、録音作業は失敗に終わってしまう。
このような点を考慮すると、ノートの表示機能は使わずに、印刷したノートを手元に置いて録音した方がスムーズに作業を進められる、といえるだろう。
「ナレーションの録音画面」の下部には、「レーザーポインター」や「ペン」を使用するためのアイコンが並んでいる。
この機能を使って、スライド上を光点で指し示したり、スライド上にペンで書き込んだりすることも可能だ。もちろん、これらの動作もナレーションと一緒に記録される仕組みになっている。
画面の右下には、「マイク」、「カメラ」、「ワイプ表示」のON/OFFを指定するアイコンが並んでいる。カメラをONにすると、自分の顔を動画撮影して、それをワイプ表示しながらナレーションを録音することが可能となる。
動画ファイルの作成
最後に、ナレーションを録音したスライドショーを動画ファイルに変換する方法を紹介しておこう。
録音が済んだら「ファイル」タブを選択し、左側のメニューで「エクスポート」の項目を選択する。続いて、「ビデオの作成」を選択すると、以下の図のような画面が表示される。
ここで画質を指定して「ビデオの作成」ボタンをクリックすると、動画ファイルの作成を開始できる。
その後、通常の編集画面に戻るが、すぐに動画ファイルが作成される訳ではないことに注意しなければならない。動画変換はそれなりに時間を要する処理であり、パソコンの性能によっては10分以上の時間を要する場合もある。編集画面の下部に「動画変換の進行状況」が表示されているので、これが完了するまで待たなければならない。
動画変換が済んだら、保存先に指定したフォルダーを開いてみよう。動画ファイルが作成されているのを確認できるはずだ。
このファイルをダブルクリックすると、動画再生アプリが起動し、動画の内容を視聴できるようになる。
このように、ナレーションの録音さえ済ませておけば、それをもとにプロモーション用の動画を作成することも可能である。作成した動画は、自社のWebサイトに掲載する、YouTubeで一般公開する、などの用途に活用できる。もちろん、発表会場などでビデオとして流すことも可能だ。
少し変わった使い方としては、スライドに動画を挿入しておくことで、PowerPointを「簡易的な動画編集アプリ」として使うことも可能となる。スライド作成だけでなく、幅広い用途にPowerPointを活用する方法として覚えておくと、いつか役に立つだろう。