クライアント管理ソリューションを提供するKaseyaが、現在注目しているのがWindows XPからWindows 7へのマイグレーションだ。
Windows XPは2001年秋に発売されたOSで、すでに発売後10年以上が経過しており、基本的には2008年で販売が終了している。しかし、Windows XPをオフィスで使っているという企業は少なくない。
Net Applicationsが昨年12月に発表した、2011年11月におけるデスクトップOSシェアは、依然、Windows XPがトップとなっている。企業によっては、Windows 7が動作可能なPCを購入した場合でも、法人向けライセンスのダウングレード権を利用して、Windows XPを使い続けている会社もあるだろう。
確かにWindows XPは安定感のあるOSであり、ちょうど日本でのPC普及期に登場したOSでもあるため、対応しているハードウェアやアプリケーションは多い。中にはWindows XPで利用することを前提に業務システムを構築しているという企業もある。
一方で、Windows 7では64bit版が主流となったこともあり、以前から利用していた周辺機器がうまく動かないことも多い。システムの使い勝手も細部で変更されており、とまどう部分もある。何より、10年近く使い慣れた環境を手放すというのは、抵抗があるだろう。
実際、Windows Vistaへの移行があまり進まず、ユーザーからの要望が多かったこともあり、マイクロソフトでは異例のWindows XPのサポート延長を行った。しかし、その延長されたサポート期限も2014年4月8日で終わる。
サポートが終了すれば、セキュリティの更新プログラムが提供されなくなり、セキュリティリスクは非常に高くなる。適切なアップデートが行われなくなったOSが使い続けられているとなれば、悪意のあるユーザーにとっても狙い目となってしまう。とても業務で利用することはできない。
したがって、企業は業務システムとの互換性を担保しつつ、社内のPCをすべてWindows 7に変更する作業を約2年で完了しなければならない。Kaseyaでは、キヤノンマーケティングジャパンと協業し、そんな企業向けにマイグレーションサービスを提供している。
順調に移行を終えるための着手タイミングは今
先にWindows XPのサポート期限が2014年4月だと述べたが、実際に企業がWindows 7への移行を行う場合、どのくらい時間がかかるのだろうか?
「Kaseyaでの実績では、1,000台のクライアントPCがある環境で単純な移行作業に3カ月、事前調査が必要な場合はプラス1.5カ月というところです。手作業での移行となると、その3倍の時間がかかりますから、1年以上かかるということになりますね」と、Kaseya Japan社長の北原信之氏は語る。
ハードウェアの調達やオフィスでのネットワーク構築、ユーザーのトレーニングまでを考えると、Kaseyaのソリューションを利用した場合でも、もう少し時間がほしい。2014年4月までにすべての作業を確実に終えるには、年内には着手したいところだ。そのためには、2012年度の上期には、具体的な行動に向けて動き出さなければならないだろう。
最近では、Windows 8の情報も提供されつつあり、企業によっては、Windows 7をスキップし、Windows 8のリリースを待ってアップグレードしようと考える企業もあるかもしれない。この点について北原氏は、「近くWindows 8が発表されることが決まっていますが、これを待って最新OSにいきなり乗り換えようというのはオススメしません。リリースされたばかりのOSをビジネス導入するのは難しいですし、リリース待ちと様子見で多くの時間が失われます。今がOS乗り換えのタイミングです」と指摘する。
現状把握のための時間も必要
いつかは移行しなければならない、その期限が迫っているというのは多くの企業が理解している。しかし、何から手をつけてよいのかわからないという声も少なくない。
「まずは、現状を把握しなければなりません。たとえば、アプリケーションについては、使っているものは何なのかを確認し、それがWindows 7でも利用できるのかどうか確認する必要があります。同じように基幹システムなども検証が必要です」と北原氏。
基幹システムがブラウザを利用するタイプの場合、IE9への対応状況を検証する必要があるが、場合によっては、その検証だけで半年程度かかることもある。また、業務の中でExcelを多用している場合、マクロを使っているのかどうか、そのマクロがWindows 7とOffice 2010の組み合わせで動くのかという検証も必要だ。
「企業によっては、自分が何のツールを使っているのか、普段使っているExcelファイルにマクロが入っているかどうかもわからないというケースも少なくありません。そうした調査もKaseyaなら代行できます」と、北原氏は説明する。
手作業の1/2のコスト、1/3の時間で移行可能
「Windows XPとWindows 7ではフォルダ構成が大きく違いますし、従来の32bit向けのものが64bitで動くかどうかわかりません。単純に新しいPCを購入して社員が必要なデータを移せばよいというわけにはいかないでしょう。もし完全に手作業で移行するならば、1台あたり準備に半日、移行作業そのものに1日半程度はかかると考えられます。それを外部委託した場合、1台の作業で数万円はかかります」と、北原氏は指摘する。
社員全員がPCに詳しいならばともかく、慣れない新たなOSを使いながらスムーズに移行するのはたいへんだ。かといって、専用の作業者を用意することも難しいだろう。外部委託するにしても、その手法をよく検証しなければ、単なる手作業の代行になってしまい、時間とコストがかかるばかりだ。
「たとえば、PC環境を別マシンに移植する引っ越しツールがありますが、これを使っての移行はごく小規模な場合以外オススメできません。移植できる内容に限りがありますし、仮に要件を満たしていたとしても、すべてのPCにツールをインストールして旧PCと1対1で移植作業を行うのでは非効率的です」と北原氏。
この2年でPCの入れ替えを行った企業の場合、Windows 7をWindows XPにダウングレードして利用しているケースも多いが、このような場合、そのPCをそのまま利用することになり、余計に移行が難しい。単純にWindows 7のアップグレードインストールができないため、現環境のバックアップを作ってからWindows 7をクリーンインストールし、その後、移行作業を行う必要があるからだ。
「Kaseyaを使っても全てのマクロが動く、全ての周辺機器をそのまま使えるというわけではありません。しかし、Windows 7環境にできるだけ簡単に今の環境を移行させたい、という要望には応えることができます。現状調査から移行作業までを完全にお任せいただくことも、一部をお客様自身でやっていただくことも可能です。そして、手作業と比較した場合コストは1/2、時間は1/3に圧縮できます」と、北原氏は語った。