9月12日、インタートレードが企業のIT担当部門向けに「Cloud型 PC運用管理対策セミナー~情報システム資産の「所有」から「利用」へ~」と題したセミナーを開催した。
無料で参加できるこのセミナーは、社内の情報システム管理の担当者を対象に広く開放されたものだが、実際に集まった参加者の多くは金融機関や証券会社など、金融業界における情報システム担当者だ。これは、インタートレードが長く金融業界向けにソリューションを提供してきた実績があるからだろう。
このセミナーは、インタートレードが6月に新設したITソリューション事業本部が、今後MSP事業者としてどのようなサービスを提供するのかについて語ったものであり、そのサービスのベースとなっているのが、Kaseyaのソリューションだ。
MSPという言葉は日本ではあまり馴染みがないが、「Managed Services Provider」の略で、企業が保有するサーバやネットワークなどのIT資産の運用・監視・保守などを請け負う事業者のことだ。
インタートレード 業務執行役員で、ITソリューション事業本部長である阿久津智巳氏は、「情報システムの管理を社内や子会社で行うことにはコストがかかる。ベンダーにアウトソースするにしても人手での対応であり、管理ツールを入れても使っているのは人。これをMSPの提供するサービスに置き換えることで、コストメリットと時間のメリットが得られる。本来情報システム部門の人々はナレッジワーカーのはず。作業者としての仕事を減らし、本来の仕事をして欲しい」と語った。
金融系のノウハウと遠隔対応できるツールを組み合わせたソリューションを提供
「インタートレードの考えるMSPサービスのポイントは、業務の効率化、セキュリティリスクの低減、運用コストの削減、リソースの有効活用を実現するもの」と語ったのは、インタートレード ITソリューション事業本部 マネージャーの出相正史氏だ。
具体的なサービスとしては、Windows 7データ移行、自宅PCまでを含めたセキュリティ管理、PCライフサイクルマネジメントといったものが挙げられた。
また、金融庁通達に対応した各種ソフトウェアのバージョンアップなど、証券会社のIT運用基準への対応や情報提供も行う。
特徴は、これらのサービスをクラウド型で提供することだ。企業はハードウェアや管理ソフトを所有する必要はなく、運用ルールや判断基準も基本的なものが用意されている。これはKaseyaというツールに、インタートレードが培ってきたノウハウが組み合わされてこそ実現されるサービスだ。
同社では、これらのサービスを利用することで、40%以上のコスト削減が可能だとしている。
世界のMSP市場で採用率トップを誇るKaseya
セミナーにおいては、Kaseya Japanの社長である北原信之氏も講演。Kaseyaだけでなく、MSP市場全体を見渡して世界的な動きも解説し、MSPが現在注目されている市場であることを紹介した。
「世界のMSPマーケットはトップ100の事業者サービス収入が1,000億円程度で、年率20~30%伸びている。特にここ5~6年はアメリカで育っている市場で、昨年はアフリカでも伸びた。従来のブレイク&フィックス型の保守ではなく、プロアクティブな保守として注目されている」と北原氏。
特にリモートモニタリング、バックアップおよびDR、ヘルプデスク、パッチ管理、マネージドセキュリティサービスといった内容はMSP事業者の90%以上が提供。ソフトウェアライセンス管理、ネットワークオペレーションセンターサービス、MDMサービス、Warranty管理サービスも70%以上の事業者が提供しており、企業のITシステム管理で必要となる多くのサービスをMSP事業者から受けることができる状態だという。
北原氏によれば、そうしたサービスを提供するプラットフォームとして採用されているものとしては、Kaseyaが圧倒的に多く、トップ100事業者のうち51.7%がKaseyaを採用しているという。
「これはKaseyaがいち早く立ち上がったサービスだということも原因でしょう。最初からMSP向けに構築されたもので、立ち上げた当時は市場がなく、最初の数年は売り上げがたたなかったほどです。日本はこれからでしょう」と北原氏は語った。
具体的なKaseyaの特徴としては、オールインワン・ソリューションであるためにポイントソリューションに比べて運用費用削減が可能であり、MDM等の新機能にも逐次対応していることや、ITオートメーションの実現により運用管理者のオペレーションが軽減できることなどを紹介。グローバル対応や多店舗、多地点への対応も可能であるため、非常に効率的な対応を安価に行えることが強調された。
「現在多いのはWindows 7への移行案件。また、企業合併等にともなうドメイン変更やセキュリティポリシーの統合などをきっかけに利用されることが多く、現在は6,000台のクライアントPCを半年で合併先に合わせた設定にして欲しいという案件も抱えている。こうしたことをきっかけにKaseyaを使ったユーザーの多くは、そのまま使い続けたいと言ってもらえている」と北原氏はKaseyaが企業にもたらす価値を語った。
北原氏によれば、Kaseyaユーザーの7割はMSPだという。日本ではまだMSPという概念が認知されはじめたばかりだが、インタートレードのような業界のノウハウをしっかり持った上でソリューションを提供するMSPが登場することで新たな市場が立ち上がり、多くの企業が情報システム管理の負荷を低減できるようになるだろう。