自動車や船の周りの流れの解析
京コンピュータシンポジウムにおいて、東京大学の生産技術研究所長の加藤千幸教授は、自動車や船の周りの流れ解析と題して、京コンピュータを利用した最新成果を発表した。
京コンピュータを利用した流れの解析の最新成果を発表する東大の加藤教授 |
車の周りの空気の流れや船の周りの水の流れは、推進抵抗を決める重大な要素である。従来のシミュレーション結果を見ると、流線型の車の表面に沿って空気が流れ、抵抗が小さい状態になっていると考えられていたのであるが、格子サイズを細かくして、京コンピュータを使って空気の流れをシミュレーションすると、細かい渦が無数にできていることがわかったという。従来の粗い格子のシミュレーションではこれらの渦が解析できなかったので、精度が悪かったという。
なお、格子のサイズをX、Y、Z方向に1/10にすると、格子の数が1000倍になり、さらに隣接する格子に影響が伝わる時間は1/10になる。結果として、単純にいうと計算量は1万倍になってしまう。このため、従来のコンピュータでは細かい格子での計算ができなかったのであるが、京コンピュータを使うことにより細かい格子でのシミュレーションが可能になった。
次の図は、1mm以下の渦まで可視化できる京コンピュータによるシミュレーションを使い、渦を制御して空気抵抗を減らした例を示している。
元の形状では車の後部の端に強い渦ができている。この部分の形状を少し変えることにより渦の強さが減少して空気抵抗が7%減少し、燃費が3%程度向上するという。
また、船の場合も同様であり、細かい渦までシミュレーションすることにより精度が向上し、水槽で模型を曳航する測定をシミュレーションで置き換えることができるようになる。
京コンピュータを使えばファンの騒音の解析も可能であり、サーバなどの冷却に使われるファンも2重反転式にして形状を最適化することによりノイズレベルを従来のファンと比べて6dB減少させることができる。この技術は、すでに特許を取得しているという。
このように空気や水の流体シミュレーションに関しては、京コンピュータの使用により、すでに成果が出始めている。