PDF、エクセルシート、パワーポイント、図面、画像、動画など、読者の皆さんも、業務で毎日のように扱っているかと思いますが、こういった「電子ファイル」の形態で管理される情報の総称をIT用語では「コンテンツ」と言います。今回は、コンテンツ管理が今再注目されている理由について解説します。

企業が持つ情報の90%は「コンテンツ」

コンテンツは、顧客情報や取引情報など、データベースシステムの中で「表形式」で管理される「構造化データ」と比較して、「非構造化データ」と呼ばれることもあります。

企業が持つ情報の20%が構造化データで、残りの80%は非構造化データであると、以前からよく言われていましたが、IDCが行った2023年の調査によると、その実際の比率は10%対90%であることがわかりました。

さらに、2023年だけで、世界中の企業や組織が生み出すコンテンツの総容量は7万3000エクサバイトを超えるという調査結果も出ました。これは途方もない数字です。興味がある方は、こちらのブログをぜひ読んでみてください。

  • 企業が持つ情報の9割を占める 「コンテンツ」

    企業が持つ情報の9割を占める 「コンテンツ」

コンテンツ管理はどのように行われてきたのか?

保有する情報の大半を占めるコンテンツが、企業や組織にとって重要な情報リソースであることは、言うまでもないことですが、それに相応しい手法で、正しく管理されているでしょうか。

筆者はよく、企業のIT部門責任者やDX推進リーダーの方に対して、「御社では、どのようにコンテンツ(電子ファイル)を管理していますか?」とお訊ねしていますが、その典型的な回答を1枚の絵でまとめたのが以下の図です。

  • 御社ではどのようにコンテンツを管理していますか?

    御社ではどのようにコンテンツを管理していますか?

「システム処理」が中心になるのが「定型業務」のエリアです。左上はIT部門が管轄していることが多く、先進的な企業ではECM(エンタープライズコンテンツ管理)と呼ばれる専用のソフトウェアが使われています。

右上は、事業部門が管轄していることが多く、各アプリのストレージ領域に電子ファイルが散在しています。

「非定型業務」は「人と人のコミュニケーション」で成り立つ業務領域ですが、左下は、昔からファイルサーバやグループウェアを使っているという回答が典型的です。

しかし、そのコンテンツを社外関係者に共有するとき、メール添付で暗号化ZIPファイルを送り、あとからパスワードを送る、いわゆる「PPAP」をやってしまっている、または、ネット上の無料で使えるストレージサービスを利用してしまう社員もいて、シャドーITが問題視されている、そんなお答えが多いのが現状です。

まさに情報の「サイロ化」です。これが原因で、必要な時に必要なコンテンツを探すことができず、同じコンテンツを再作成するといったような非効率が起きてしまうのです。

そして、同じコンテンツが「あちらにも、こちらにも」と散在することになり、情報漏洩のリスクを高めてしまうのです。これに、いち早く気づいたITリーダーは、「働き方改革」や「情報セキュリティ強化」のテーマで、システムをクラウド化し、改善を目指しました。

「働き方改革」「情報セキュリティ強化」などの潮流がコンテンツ管理をどう変えたのか?

しかし、結論を先に書くと、「コンテンツ管理」という観点では、あまり状況は変わりませんでした。その理由は、以下の図を見ていただくと一目瞭然です。

  • 部分最適アプローチから抜け出さない限り情報サイロ化を回避することはできない

    部分最適アプローチから抜け出さない限り情報サイロ化を回避することはできない

例えば、「働き方改革」は、左下の枠内で発生している課題、例えば、在宅勤務者がファイルサーバにアクセスできないといったような問題を、クラウド上で使えるコラボレーションツールを導入することで解決する、といった具合にIT施策を推進します。

右下の「情報セキュリティ強化」では、USB・PPAP・シャドーITの「三大撲滅運動」を展開するため、社外共有専用のクラウドストレージを導入したりします。以前はこの用途だけでクラウドサービスを使うという企業も少なくありませんでした。

上の2マスも同様に、「BCP対策」とか「顧客接点デジタル化」といったようなテーマで各施策が進められます。この「各マス内で起きている問題を各マスの中で解決する」という、「部分最適」を繰り返す限り、コンテンツは、各システム、アプリケーションが持つストレージ領域でそれぞれ管理されてしまうため、情報サイロ化の問題は何も解決しないのです。

コンテンツ管理が再注目されている理由

前述のように、企業や組織が生み出す情報の量は爆発的に増加しており、その90%をコンテンツが占めています。その結果、「散在するストレージに無秩序に格納され、再利用されないまま放置されている」、「このような状態を看過できない、そろそろ本格的に改善しなければならない」と考えるCIO/CDOは少なくありません。

そこで注目されているのが「コンテンツ管理基盤」という考え方です。各システム・アプリの中でコンテンツを管理するのではなく、一元管理する「基盤」を構築して、すべてのコンテンツを集約するという発想です。

最近では、例えばBoxのようなクラウド型のコンテンツ管理サービスを「コンテンツ基盤」として採用する企業が増えてきており、以下の図のようなイメージで「フル活用」されています。

  • コンテンツ基盤としてBoxを利用するイメージ

    コンテンツ基盤としてBoxを利用するイメージ

次回は「コンテンツ管理の盲点とその克服法」というテーマで、コンテンツ管理基盤に求められるケイパビリティについて、解説します。