ダッソー・システムズは6月18日~21日の4日間、アメリカ・ボストンにて”サイエンス”をテーマとした年次グローバルイベント「SCIENCE IN THE AGE OF EXPERIENCE 2018」を開催した。本連載では、同イベントで行われたセッションや、現地でのインタビュー取材の様子をお届けする。
第5回となる今回は、以前紹介したダッソー・システムズの「POWER'BY」戦略に引き続き、同イベントのセッションにて語られたダッソー・システムズの最新の「3DEXPERIENCE」プラットフォームがユーザーにもたらす価値、および同社が現在注力している戦略について紹介する。
「SCIENCE IN THE AGE OF EXPERIENCE 2018」
ダッソーが”サイエンス”をテーマとして開催する年次グローバルイベント。
ダッソー・システムズが提供する、シミュレーションソフトウェアの「SIMULIA」ブランド、ライフおよびマテリアルサイエンスの「BIOVIA」ブランドのユーザーを中心とし、エンジニアや研究者、企業関係者、学術関係者などが集い、現代社会において科学が果たすべき役割についての最先端の知見や事例を共有する会で、2018年で3回目の開催となる。
クラウド上でのシミュレーションの加速へ
ダッソー・システムズでは、前回紹介した「POWER’BY戦略」に加えて、サービスのクラウドでの提供にも力を入れているという。すでに「SOLIDWORKS」や「CATIA」といったサービスはすでに、クラウド上での利用が可能となっているほか、それ以外のサービスも徐々にクラウドへの移行を進めているという。では、このように同社がクラウドでのサービスの提供に注力しているはなぜなのか?
その理由の1は、シミュレーションを重要視する顧客が増えているためであるという。クラウドでサービスを提供することによって、例えば、これまでオンプレミスな運用を行っていなかった企業であっても、新たに環境を整えるための投資を行うことなくクラウド上でシミュレーションを実施できるようになるためだ。
また、もともとオンプレミスで運用していた企業にとっても、その環境では非常に時間がかかってしまっていた重いワークロードを実行する場合に、その一部をクラウドを用いることでカバーすることができるようになるというメリットがあるとのこと。
これまで、オンプレミス環境で過負荷がかかるシミュレーションを行う必要がある場合には、計算を一部簡略化したり、そもそもの演算処理をあきらめてしまうというユーザーも少なくなかったそう。しかし、クラウドでのサービスが提供されることによって、そのような問題を抱えていたユーザーも、あらかじめ”この部分はクラウドで。この部分はオンプレで”とワークロードを設定することによって、既存環境で足りない能力をクラウドで補うことが出来るようになった。
なお、今後も各種サービスのクラウド環境での提供は進めていく予定であるが、完全移行する予定はなく、オンプレ・クラウドの両方でサービスを展開していく予定であるとのこと。
3DEXPERIENCEは、21世紀の変革を起こせるか
同社は今回のイベントで、近年の産業界に起こっている変化を「インダストリー・ルネサンス」と表現しており、そのことについては2018年5月に行われた「3DEXPERIENCE FORUM Japan 2018」でも説明していた。ここでインダストリー・ルネサンスとは、近年の産業界では、かつて火薬・羅針盤・活版印刷といった技術が時代を変革したように、社会全体に大きな影響を及ぼす新たな変化が起こっているということを意味している。
近年、製造業におけるシミュレーションの重要性が増し、さまざまなソフトウェアが開発されている。しかしその一方で、それらのソフトウェアは参照しているモデルが異なっていたり、GUIが異なっていたりと、1つ1つのソフトウェアは便利であるにも関わらず、それらを連携させてTTM(Time To Market)の短縮につなげることは難しい現状にあった。
それらのソフトウェアを1つのプラットフォーム上で使えるようにするダッソー・システムズの3DEXPERIENCEによって、今後シミュレーション技術がより発展していくことで、世界のものづくり企業はどのように進化を遂げるか。ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEが産業界で起こす変革は、社会にどのような影響を与えることとなるのか、これからも注目していきたい。