こんにちは。昨今、新型コロナウィルスの蔓延により、不便な生活を強いられています。私もご多分に漏れず、外出の業務が制限されておりますが、ビデオ会議システムはもちろん、オンラインのホワイトボードツールやら、このような機会に初めて知ったツールがいくつかあり、与えられた状況でもいろいろできるものなのだなと感心しています。
さて、今回も3D CAD最新動向ということでお話ししたいと思いますが、今回のテーマは「クラウド」です。
昨今のクラウド技術の発達により、クラウドを使用したCADソフトウェアが増えています。既存のCAD(SOLIDWORKSやAutodesk Inventorなど)の場合は部分的にクラウドテクノロジーを使用しているようです。
例えばSOLIDWORKSの場合は、データ管理ツールでクラウドテクノロジーを使用しているようです。
また、デザインツールでも一部、クラウド型製品がリリースされています(クラウドベースの3Dモデリングソリューション:3D Creator)、(クラウドベースのサブディビジョン(Sub-D)モデリングソリューションにより、幾何学的ではない形状や複雑なサーフェスを手軽に作成:3D Sculptor)。
Autodesk Inventorの場合は、デザインレビュー用のツールが用意されています(クラウドベースでの3D設計のレビュー:デザインレビューツール)。
既存のCAD製品はこのように、基本機能の補助的なツールとして用意されていますが、昨今ではCADソフトウェア自体をクラウド上で駆動させるものが登場しています。
その代表としては、「Autodesk Fusion 360」と「OnShape」です。
ともに2015年頃に初版がリリースされているということで、CAD自体のクラウド化はここ数年の流れということになります。
Fusion 360(Autodesk社)
クラウドをベースとしたCADですが、クライアントはPC上にインストールして使用します。
3Dモデリング、アセンブリおよび図面作成のみならず、レンダリングや分解図作成機能もあります。さらにメカニカル解析やCAMといった機能もすべてFusion 360ソフトウェア内で使用することができるようになっています。
日本向けにも細やかにサポートされており、ユーザーインタフェースの日本語化はもちろん、日本語オンラインヘルプや日本語でのサポートもあります。
OnShape(PTC社が2019年10月に買収)
PCにソフトウェアをインストールせず、Webブラウザ上でソフトウェアが起動します。
3Dモデリング、アセンブリおよび図面作成を行うことができます。解析やCAMも併せて使用したい場合は、App Storeから購入することで使用可能です。残念ながら、ユーザーインタフェースをはじめ、すべてのドキュメントは日本語化されていません。この点に関しては、PTC社が買収したことで今後整備されていくのかもしれません。
両者とも、CADとしての機能は正直に言うとSOLIDWORKSやInventorにはかないません。公差も考慮した設計や、類似品のシリーズ化機能、部品表の整備など、設計において最終的に必要な機能についてはかなり不足しています。しかし、形状を作成し、アセンブリの各パーツを配置するといった、最低限の機能はありますので、通常の業務には十分使用できます。
ではなぜ機能としてはフル装備しているわけではないCADを、各社がリリースしているのでしょうか? その理由の1つとしては、クラウドベースであるということです。
設計作業を進めるにおいて、複数の人たちで同時に作業をする、またデータをやり取りするということは普通に行われています。その際に、従来のCADを使用している場合にはどうしてもファイルそのものを相手に送る、または受け取るということが必要になります。そうすると、タイムラグが生じるのももちろんですが、どれが最新版かわからなくなる、関係者に行きわたっていなかったことが後で発覚したなど、さまざまなトラブルが発生する危険性があります。もちろん、従来型のCADの場合、データ管理ツールを併用する方法がありますが、これを使いこなすには深いIT知識を必要とするため、スムーズに運用するまでに行くのがなかなか困難である場合が多いです。
これらを解消できるのがクラウドの活用です。クラウドベースCADの最大のメリットは共同作業です。ファイルは基本的にクラウド上に保存されるので、共有、および共同作業が非常に容易になります。例えば、クラウド上のデータが保存されている場所に関係者を招待し、同一ファイルを使用し、同時並行で設計作業を行うことができます。(OnShapeの動画では0:35あたりから複数メンバーでの作業の様子を見ることができます)。
また、Fusion 360では、「パブリックリンクを共有」という機能により、Webブラウザ上でデータを閲覧できるので、相手のFusion 360所有の有無を確認しなくても、データを直接見てもらうことが可能になります。
上記以外にも、クラウドベースのCADには従来のCADには無い発想のさまざまな便利な機能が搭載されています。簡単に両者の比較をまとめましたので参考にしてみてください。
企業によってはインターネットへのアクセスが制限されている場合などもあるかと思いますが、これらクラウドベースCADのさらに大きなメリットとして、高価なグラフィックスカードを搭載したPCである必要はなく、Mac PC上でも使用できるという点も挙げられます。したがって、ご自宅のPCで気軽に試してみるということも可能です。Fusion 360、OnShape、いずれもまずは体験版として使用することができますから、例えば在宅勤務中のすき間時間に試してみるというのはいかがでしょうか?
ではまた次回をお楽しみに!