こんにちは。猛暑がひと段落したと思ったら台風、そして地震と、次々と災害が起きています。皆さまの地域におかれましては大丈夫でしょうか? 今はもう、災害の少ない安心な場所というのはあまり無いのかもしれませんね。私は取り急ぎ、災害避難グッズを見直しました。
さて今回のテーマをどうしようかと考えたのですが、本連載の前回のお話について、もう少し具体的にご紹介しようと考えました。
前回は概念的な視点での考え方や注意点と、主要CAD製品での親子関係の確認の仕方をご紹介しました。
今回は、少し具体的に良い親子関係の付け方や注意点などについてお話していきます。
良い親子関係の築き方
では、このような形状の部品に対して、さらに形状を追加する過程を考えていきます。(図-1)
この部品の背面に、突起形状を追加します。
この突起形状のスケッチをこのように描いてみました。 赤い四角形を作図し、上辺から5mm、右側の円弧形状の中心から20mmと寸法を取りました。
部品外形からの距離と円弧中心位置を基準にするという設計意図があるという意味で、この寸法の取り方自体はまったく問題がありません。
しかし、3D CADでモデリングするにあたっては、ちょっと注意していただきたいことがあります。
例えば5㎜の寸法を取った外形のラインですが、よく考えてみてください。この位置には2つのエッジと1つの平面が存在しています。図-3のように正面から見ると同一の場所に同一の長さの3つの要素が重なっているので1本の線になって見えているだけです。
2本のエッジはともに、フィレットの接線エッジです。スケッチを描く際には通常、正面から見た状態で描く場合が多いかと思います。そのような場合、無意識に上辺をクリックすると、図-4の"エッジ2"を選択されてしまいがちです。
しかし通常、フィレットのエッジを参照として使用することはあまりお勧めできることではありません。フィレットは変更する可能性の非常に高いフィーチャーなので、後々なんらかの設計変更をする際にフィレットから参照を取っているとエラーの発生率が高くなります。例えば単にフィレットが不要になったからと削除すると、参照しているエッジが無くなるのでこの長方形の突起のスケッチがエラーになります。
したがって通常は、フィレットからは参照しないようにします。この場合、最も望ましいのは側面から寸法を記入することです。CAD製品によってはスケッチ平面に直行しているソリッド平面を寸法記入の参照として使用できますが、一部のCAD製品はソリッドの平面は使用できないものもあります。その場合は、既存形状の外形線などを参照するコマンド(例えばInventorの場合は"ジオメトリを投影"、SOLIDWORKSの場合は"エンティティ変換")を使用して現在作業中のスケッチに対して投影したラインを使用するようにします。
ただし、その前にフィーチャーベースモデリングの基本として、フィレット(角R)や面取りは部品形状がおおよそ決まってから、モデリング手順としては後の方の工程で入れた方が良いとされています。フィレットや面取りはエッジを基準に配置するフィーチャーであり、形状を作りこんでいくとエッジの形状や位置は移動する可能性が高く、早い段階で付けてしまうと結局後で修正しなければならなくなるという可能性が高くなるからです。 この例の場合、実はフィレット作成を後回しにしていれば、突起のスケッチ寸法記入の際にベース形状のエッジを使用できるので、エラーの発生はほぼ回避できます。
このように、フィーチャーを作成する際には1つひとつのクリックが参照関係を発生させるので、どのエッジをクリックしているのかということを意識する癖を付けるようにしてください。
面倒なことのように感じられるかもしれませんが、寸法を記入する際には終始一貫して正面から見ているのではなく、状況によっては3Dモデルを斜めから見えるように回転させた状態にして作業をするようにと意識すると、おのずと選択する要素も意識できるようになると思います。
ではまた次回をお楽しみに!