こんにちは。今年はソメイヨシノがあっという間に咲いて、あっという間に散ってしまいましたね。そのせいで今年はお花見に行くことができませんでした。残念に思っていたら、数日前にたまたまた通りかかった道が八重桜の並木道で、ちょうど見ごろでした。ソメイヨシノにこだわらなければ、ある程度の間は桜を楽しむことができますね。

ところで今回のテーマですが、前回の「モデリングちょっと一工夫」の続編として、設計の意図を反映したモデリング方法をご紹介します。特にパラメトリック モデリング手法では、寸法のパラメータやフィーチャー間の親子関係によって形状を作り込んでいきます。これらを上手く利用することで、設計の意図、例えば守るべき数値や基準と考える位置などを表現することが可能になりますので、作り方に留意しましょうというお話です。

例1:全体の高さの値を明示的に定義し、基準として押さえる

例えば、このような形状の部品を設計したとします。「この形状の中で基準となる部分はどこでしょう?」と突然聞かれても答えはわかりません。なぜなら、この部品がどのような機能を果たすものかがわからないからです。

周辺に取り付く他の部品の情報もあり、さらにこの部品がどのように機能するのかが分かれば、ある程度は想像することは可能です。しかしそれもあくまで想像または推測です。想像や推測ではなく、基準となるところを明確化することができるのが、パラメトリック モデリングのメリットです。

  • 全体の高さの値を明示的に定義し、基準として押さえる

    全体の高さの値を明示的に定義し、基準として押さえる

「高さ」を示すための任意の「パラメータ」(この場合は「仮の名称」と解釈してください)(※1)というものを作成し、その値を設定しておきます。この例ではその任意のパラメータとして”height”を設定しています。そして関係式として 「height = 80mm」 と定義しています。つまり「高さを80mmに保ちたいです」という意思表示です。

そして、高さに当たる寸法に対して、“80mm” という数値を適用するのではなく、“height”を適用します。これにより、結果的に高さとして高さを表現したい箇所が80mmになります。

  • 高さに当たる寸法に対して、“80mm” という数値を適用するのではなく、“height”を適用

    高さに当たる寸法に対して、“80mm” という数値を適用するのではなく、“height”を適用

この設定を行った場合、高さを80mmから他の値に設計変更することになった場合は“height”の値を変更します。これにより、自動的に“height”が適用されている数値が更新された数値になります。

  • “height”が適用されている数値が、自動的に更新された数値になる。

    “height”が適用されている数値が、自動的に更新された数値になる。

※1:「任意のパラメータ」の呼称はCADによって異なります。(例:SOLIDWORKSは「グローバル変数」、InventorやFusion 360などのオートデスク製品は「ユーザ パラメータ」です)

例2:全体の高さは成り行きであり、土台の高さが修正されても上の部分の高さは変わらないように保ちたい場合

この場合は例1と異なる作成方法が便利です。

まず、土台の部分のみを作成します。

  • 土台の部分のみを作成

    土台の部分のみを作成

次に上の部分を作成します。その際に、スケッチを描く平面を、最初の形状の上面に取ります。

  • スケッチを描く平面を、最初の形状の上面に取る。

    スケッチを描く平面を、最初の形状の上面に取る。

その結果、この形状ができあがります。

  • できあがった形状

    できあがった形状

このように作成することで、上の部分の基準が最初の形状の上面になるので、ここに親子関係が生まれ、最初の形状の高さが変わった場合に上の部分は追従するようになります。

  • 高さを変えても上面が追従する
  • 高さを変えても上面が追従する
  • 左がビフォー、右がアフター。黄緑の線の部分の高さの値が変わっているが、上の部分が追従している。

最終的に同じ形状になるとしても、そこに至るまでの作り方はさまざまな方法があります。上記各例の作り方も、これが唯一絶対ではなく、他にも方法は考えられます。

最近の3D CADは以前に比べると操作性が向上し、しっかりとトレーニングを受けていなくても「いじっていたらなんとなく使えるようになった」ということもしばしばです。しかし、その後も継続的に使いこなせるようになるには、そのCADの特長をきちんと把握し、それをメリットとして役立つように扱うことが重要となります。

これができていないと、結局「あのCADは扱い方が難しい。使いこなせなかった」となってしまい、せっかくのCADへの投資が無駄になりかねません。ぜひ、このような使い方をマスターしていただきたいと思います。

ではまた次回をお楽しみに!

著者紹介

著者近影

草野多恵
CADテクニカルアドバイザー。宇宙航空関連メーカーにて宇宙観測ロケット設計および打ち上げまでのプロセス管理業務に従事し、設計から生産技術および製造、そして検査から納品までのプロセスを習得。その後、3D CAD業界に転身し、製造業での経験をもとに、ベンダーの立場からCADの普及活動を行う。現在は独立し、ユーザーの目線に立ち、効果的なCAD導入を支援している。 著書に「今すぐ使いたい人のためのAutoCAD LT 操作のきほん」(株式会社ボーンデジタル刊)がある。