一進一退の相場が半年近く続いて…
日本の株式市場の2024年を振り返ると、7月11日に4万2426円で二番天井を付けて、その後、株価は大幅に下落しました。8月5日に3万1156円で当面の底入れをし、一旦4万円近くまで戻りましたが、12月末までに4万円の壁を突破できませんでした。
株価は3万6000円から4万円というゾーンで推移し、8月安値の後、12月まで5カ月間揉み合ったのです。高値を付けてから少し下げて揉み合う形を「中段保ち合い」と言いますが、この日柄は5~6カ月です。株価は上か下かに放れていい局面だと言えます。
株式市場としては、特別にいい材料も悪い材料もない状況で、まさに一進一退の動きが半年近く続いてきたわけです。その意味で、相場の転機は25年1月に訪れる可能性があります。
株価を動かす材料が出てくるか。1つは1月20日にドナルド・トランプ氏が大統領に就任した後、どういう政策を打ち出してくるかです。すでに減税、規制緩和、関税を必ず実行するとしています。
この中で減税と関税はインフレ要因、規制緩和はコストを下げますからデフレ要因です。トランプ氏の政策はインフレを招くと言われますが、規制緩和の強烈な実行でインフレ要因を相殺する可能性があります。
すでにホワイトハウスの人員を大幅に削減するといったことや、対外支援の大幅カットも言われています。加えて、海外に駐留している米軍を撤退させたり、駐留のためのコストを当該国に負担させたりという可能性もあります。これらは規制緩和、改革です。これによってインフレは4%程度で推移し、米国には株高、好況が訪れるのではないかと見ています。
このような手法はポリシーミックス(複数の目標を同時に実現するために、財政・金融政策など、経済政策手段を組み合わせ一体化運営すること)と呼ばれます。うまくいけばトランプ政権誕生後の、新たな成長モデルになる可能性があります。
こうした私と同じような見方を、24年12月11日付日本経済新聞のコラム「十字路」でソニーフィナンシャルグループチーフエコノミストの菅野雅明氏が指摘していました。
なので、短期的な上下動はあっても、米国株高は続くと見ています。ただ、今は歴史的な高値圏にありますから、どこかで多くの投資家が青ざめるような急落、調整局面もあるかもしれません。
トランプ政権のポリシーミックスがうまく稼働するかどうかが重要ですが、その実働部隊がDOGE(Department of Government Efficiency=政府効率化委員会)です。この組織を率いるのがテスラ創業者のイーロン・マスク氏になりますが、トランプ氏の威光を背景に、この組織がポリシーミックスを実行できるかが問われます。マスク氏は、連邦予算を少なくとも2兆ドル(約300兆円)削減できると言及しています。
この組織がうまく稼働すれば経済にプラスですから、日本の石破茂政権の政策が不発であっても、米国株に連動して日本株も上昇することになります。トランプ氏が強調している、米国の「黄金時代」が到来する可能性があるのです。
暗号資産(仮想通貨)のビットコインのさらなる上昇も期待できます。
この理由は2つ考えられます。1つは、先の大統領選でトランプ氏を強力に支持したマスク氏、シリコンバレーの大物投資家・ピーター・ティール氏など、ビットコインを大量に保有する人達に報いるためです。
もう1つは私の推測ですが、米国は今、国債増発によって膨大な債務を抱えています。この対応に向け、ビットコインを外貨準備のように蓄積して累積債務を軽減させる可能性もあると見ています。トランプ政権は、こうした荒療治も辞さないのではないでしょうか。
さらに、世界中の途上国では自国通貨の価値が下落しています。こうした国々ではビットコインは流通していますが、信認に欠ける面があります。これを米国がビットコインやイーサリアムを資産として認めるならば、途上国は歓迎し、米国への信頼も厚くなります。
以上のような、様々な思惑を孕みながら、トランプ氏の任期のうちに、史上最大の「トランプバブル相場」がやってくると見ています。ゆえに米国株、ビットコインともに思わぬ高値を付ける局面があり得るのです。
日本銀行は24年12月の利上げを見送りましたが、今後は物価目標2%に向けてじわじわと利上げを行ってくると見ています。ただ、利上げで株価が急落したり、景況感が悪化するといった事態は避けたいわけです。
24年7月の利上げの際には円高になり、製造業はその四半期に軒並み減益に陥りました。ですから足元では25年1月に利上げする可能性が言われていますが、いずれにせよ極めて慎重に手を打つはずです。
このことが日本の株価が上がらない要因になっています。日本の株価が4万円で頭打ちになっている理由は、1つ目に石破政権の政策が不発であること、2つ目に日銀が利上げ含みであること、3つ目にトランプ政権の先行きが不透明であることです。
その意味で、日銀は早めに利上げをする必要があります。それで一時円高になったとしても、株価は織り込みます。上げるのか、上げないのかという状態が一番よくありません。
利上げによって、実質1%、名目2%程度の金利となれば、当面は金利を上げる必要には迫られないでしょう。「いつ上げるんだろう」と思われている間は、株価の上値を重くします。
ただ、前述のように米国の株高が始まれば、日銀がどうあろうと日本の株も連動して上昇します。ただし、利上げで不利になるような業種の株価の上値は重い状況が続きます。
どちらにしても、25年は「何が起きるかわからない」という状況です。トランプ氏、マスク氏によって米国の大改革が実行されるかどうかが、米国だけでなく世界経済の行方を左右することになるでしょう。