お隣の赤い惑星である火星が12日深夜、2年2カ月ぶりに地球に最接近する。今年の天文現象では、春と秋に土星の輪が15年ぶりに消えることも特筆される。国内で日食は見られないが、皆既月食を見るチャンスがある。今年も、折に触れて星々を見上げて過ごしたい。
地球は365日、火星は687日かけて太陽の周りを一周(公転)する。このため、地球が火星を2年2カ月ごとに“追い越す”タイミングで互いに接近する。地球と火星の特徴の違いの一つは、公転軌道だ。地球の軌道は円に近いのに対し、火星は楕円形。そのため、最接近時の距離は毎回変わる。
国立天文台によると、今回の最接近は12日午後10時37分で、この時の地心距離(地球の中心から対象の天体の中心まで)は9608万キロ。これは、2003年の5576万キロや2018年の5759万キロなどの「大接近」に比べると遠い「小接近」。見かけの大きさは2018年の時の6割ほどにとどまる。なお大接近や小接近は慣例上の呼び方で、学術的な定義はない。
最接近の前後は火星が特に明るく、8~22日にはマイナス1.4~マイナス1.5等の明るさを保つ。最も明るい恒星であるシリウスのマイナス1.5等に匹敵し、「(小接近とは言え)深夜に天頂近くで赤っぽく輝く姿も、決して見劣りしない」と国立天文台。14日は満月で「2つの天体が近づいて輝く様子は大変、目を引く光景となりそう」ともいう。
土星を特徴づける美しい輪の正体は、上空にある数センチから数メートルの無数の氷が、太陽光を反射して輝いているもの。厚さはせいぜい数十メートルと、極めて薄い。輪は赤道上空を取り巻くように存在し、公転軌道面から26.7度傾いている。
その傾きを保って30年かけて公転するため、地球から観察するとこの輪の傾きは30年周期で変化する。輪を“真横”から見るタイミングは、その半分のほぼ15年ごとに訪れる。この時、地球から見かけ上、輪が見えなくなる。輪が実際に消失するのではない。
さらに細かくみると、輪が見えなくなる条件は(1)地球から土星の輪を真横から見る時、(2)太陽光が真横から当たるため、輪の“表面”に当たらない時、(3)地球から輪の日陰側を見る時――の3通りがある。
国立天文台によると、今年は3月24日に上記の(1)、5月7日に(2)、両者の間の期間に(3)の状態となる。ただし3月~4月中旬は、土星が地球から見て太陽の向こう側にあり、見るのは難しい。11月25日ごろに再び(1)の状態となり、この時は夕方から夜にかけて空の十分高くにあり、観察しやすい。輪の有無を見分けるには天体望遠鏡が必要。持っていない場合、最寄りの科学館などの観望会を利用するのも手だ。
9月8日には皆既月食が起こり、全国で観察できる。3月14日にもあるが、東日本の一部で皆既食が終わった後、一部が欠けた状態しか見えないという。12月のふたご座流星群は、月明かりの影響がなく比較的条件が良いという。
「4D2U」上映システム更新 国立天文台・三鷹
国立天文台は東京・三鷹キャンパス内の「4D2U(フォーディーツーユー)ドームシアター」の上映システムを昨秋に更新した。シアターは2007年に公開を開始。スパコンのシミュレーションや最新の観測データを活用し、天体や宇宙の構造、進化などの研究成果に関し、美しい立体映像を通じ一般への普及を進めてきた。
4D2Uは、空間の3次元と時間の1次元を合わせた「4次元」宇宙を、デジタルデータで可視化したものを意味する。ドームスクリーンは直径10メートル。2015年から稼働した機器類が耐用年数を過ぎ、不具合が目立つようになったことからリニューアルし、より鮮明な映像を実現したという。
4D2Uプロジェクトリーダーを務める小久保英一郎教授は「一般の方に向け、最新の宇宙像を科学的に正しく、“なんちゃって”をなるべくせずに可視化。エンターテインメント性も持たせることを目指している。研究者に3次元的視点を提供したり、研究用動画を作ったりすることにも貢献していきたい」と話す。定例公開は、専用サイトによる予約制で行っている。
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