民間の力でスピード感を持って社会課題に対応していく
─ 24年1月の能登半島地震でもクラウドファンディング(CF)が注目されましたが、改めて、CFの意義を伺えますか。
米良 世の中の分断が進み、これだけ社会課題が複雑化していく中で、政治や行政だけで課題を解決していくことには限界があると思っています。
その中で、当社は14年に民間で社会課題を解決していくプレイヤーになろうということで設立しました。東日本大震災もそうですし、今回の能登半島地震もそうですが、CFが政府や行政がなかなかすぐには取り組めない領域に、民間の力でスピード感を持って対応できるというのは、非常に意義あることだと考えています。
─ 困っている人たちのもとへ、いかに早く支援の手を差し伸べるかと。
米良 はい。特に当社が抱えている様々なプロジェクトは、より社会の中で置き去りにされてしまうものが多いんです。例えば、居場所のない若者、ひとり親世帯の方々や家庭の事情で職に就けない方々が沢山いらっしゃいます。
行政でもなかなか手を差し伸べきらないような方々に対して、多くの団体が支援活動を続けていますが、活動資金の確保が厳しいのが現状です。CFはこのような団体が資金を集める方法でもありますし、そういった切実な状況にある方々が声を上げられる場として機能しているのかと思います。
私たちもより一層、社会で起こっている様々な課題や問題を解決していきたいと思いますし、善意のある皆さんやスタートアップのような起業家たちが、より課題解決に向き合うための仕組みをつくっていきたいと思っています。
─ 皆で社会を応援していくことは非常に大事だと思うんですが、そういう価値観をいかに共有するかも大事ですね。
米良 そうなんです。人々の価値観がこれだけ多様化している中で、社会として何を課題のコンセンサスにするのかというところに、私も難しさを感じています。
SNS(交流サイト)の普及によって、今は情報の受け取りが、本当に人によって分断されてきましたよね。もちろん、個人によって興味の対象は違うわけですが、スマートフォンから入ってくる情報が自分の興味のあるコンテンツだけにパーソナライズされすぎてしまっているので、自分のコミュニティの中で出回っている情報と、それ以外の人たちが持っている情報が全然違ったりします。
そういう状況の中で、いかに社会的なコンセンサスを醸成していくかということに関しては、かなり難しいと思うと同時に、やっていかなければならないことだとも感じています。