「つなぐ」をキーワードにした東京・渋谷の再開発
─ 新年の展望と日本再生に向けて、まちづくりという視点から東急会長の野本弘文さん、東京・渋谷をはじめ、都市再生の先端を走っていますね。
野本 私が社長に就任した2011年に「3つの日本一」を掲げ、そのうちの1つが「日本一訪れたい街 渋谷」でした。当時は渋谷自体が地盤沈下していた最中。東京メトロ副都心線と東急東横線の相互直通運転開始に伴って東横線の渋谷駅が通過駅になってしまうという懸念もありました。
そこで当社は「エンタテイメントシティSHIBUYA」と銘打ち、お客様に来たいと思っていただくためには3つの名所が必要であると考えました。もともとハチ公やスクランブル交差点など観光の名所がありましたが、もう1つを作ろうと。
─ それが展望施設だと。
野本 ええ。駅直上に建設した「渋谷スクランブルスクエアⅠ期」の屋上に「渋谷スカイ」という渋谷上空から360度の景色を眺める展望施設をつくりました。今では毎日6000人以上のお客様が入場しています。
─ 外国人も多いのですか。
野本 はい、入場される8割以上が外国の方です。22年に訪日外国人(インバウンド)による訪問エリアで渋谷が1位に初めてなりました。23年も1位で訪日外国人のうち3人に2人が訪ねてきています。
また、働く人が増えたことも渋谷の特徴です。11年には約40万人のオフィスワーカーが60万人以上になりました。それだけ雇用も増えてきたということで、再開発の効果が出てきたのではないかと感じています。
─ 再開発では「つなぐ」をキーワードにしていました。
野本 そうです。まちはオープンで連続性がないと発展しません。行き止まりではいけないのです。当社の再開発ビルも全て駅や周辺とつながってオープンにする仕掛けを施してきました。12年に開業した「渋谷ヒカリエ」から24年7月に開業した「渋谷アクシュ」もそうです。全てがオープンでつながっています。
─ それが渋谷の発展につながると。東急グループは百貨店や小売りもあります。消費動向はどう分析していますか。
野本 当社グループの小売事業はコロナ禍で影響を受けた事業もありましたが、そこから回復はしつつあります。ただ、ここに来て物価が余りにも急激に上がっています。コロナ禍で値上げを我慢していた企業側も最初は遠慮しながら上げてきたのが、今ではどんどん値上げせざるを得ない状況です。
消費者も今までより少量しか買わなくなったり、買い控えの動きも、じわじわ効いている可能性があります。ここでしっかり給料が上がり、消費も高まるような政策を打っていかなければ景気への影響も出てきてしまうかもしれませんね。