東京大学は、4段階の連続フロー分子変換法による、抗アルツハイマー薬メマンチンの連続合成に成功したと2024年12月30日に発表。従来のバッチ法よりも二酸化炭素の排出を大幅に削減でき、小分子医薬品の国内での少量・多品種生産にも適した方法として期待されるとしている。
メマンチンは、「アダマンタン」と呼ばれるダイヤモンド構造を持つ小分子医薬品で、単体あるいは他の薬剤との複合化により、アルツハイマー型疾患に対して有効な作用を示す化合物。“かご型”の炭素骨格という特異性から、かつては合成が困難な炭素小分子とされており、現在でもその合成には大量の廃棄物が伴うといった課題があるという。
今回の研究では、過酷な条件が必要とされる分子変換を、触媒法を活用した連続フロー合成によって達成。多環性芳香族化合物のアセナフテンを原料として、2段階の連続フロー反応によりアダマンタン骨格が連続的に得られることを見出した。
アセナフテンを望みのアダマンタンに変換するためには、アセナフテンの安定な芳香族構造の完全水素化と、生成する多環性飽和炭化水素骨格を強酸により骨格転移させることが必要となる。
そこで、温和な条件で芳香族化合物を水素化できる、高機能触媒を使用した連続フロー芳香族水素化反応と、強酸を複合化したイオン液体を使用する、フロー骨格転移反応を利用することでこれを達成。
カラム型反応器に固定化金属触媒を使用する「気体-液体-固体系フロー反応」や、強酸複合型イオン液体を用いる「液体―液体系フロー反応」が、このような医薬品の連続合成に適用できることを示した。
これはアセナフテンの水素化、骨格転移反応ともに廃棄物を生じないクリーンな触媒的分子変換法であり、続くラジカル的ニトロ化、ニトロ化合物水素化によって、目的とするメマンチンの合成に成功したとのこと。
同大によると、核酸やペプチドに代表される中分子医薬品が注目されるなかで、小分子医薬品は製造コストが比較的安価に抑えられ、大量生産も容易なことから、汎用医薬品として継続的な需要が見込まれているという。