淡路島で新産業を創る
ー 前回は経営のSCP(事業継続計画)を考えたら東京一極集中では問題がある。だから、本社機能の一部を兵庫・淡路島に移転することを決めたんだという話でした。
南部 はい。淡路島での生活は本当にいいですよ。肉や魚は当然として、生野菜がどれだけ美味しいか。だから、こちらへ来て、子供たちはアレルギーがなくなったと言いますし、わたしも体調がすこぶる良くなって、「若返ったんじゃないか」などとよく言われます(笑)。
淡路島へ来て、地元のおじいちゃん、おばあちゃんに「うちの孫を返して」とよく言われるんですよ。だから、わたしは「どういうこと?」と気絶しそうなくらいビックリして聞いてみたら、地元の子供たちが高校・大学の進学や就職で神戸や大阪、東京に行ってしまうと。しかも、戻ってこないと言うんですよ。
パソナの社員を東京から連れてくるのではなく、地元の子供たちを戻してくれと言うわけです。だから、われわれも積極的にパソナの社員ではなかった人たちを採用しています。
ー 2000人いる中で、どれくらい地元の人を採用したんですか。
南部 今は15%くらいが淡路島出身の人たちです。これがまた驚くくらい、皆さん真面目で優秀です。
東京では大企業が沢山あって、人の奪い合いじゃないですか。しかし、淡路島なら採用もしやすいです。もちろん、神戸や徳島から通ってくる人たちもいますけど、地元で仕事があるならと考えて東京や大阪から淡路島に戻ってくる人たちもいますし、親の介護で淡路島に戻ってくる人たちもいます。
ー 淡路島で新たな雇用が生まれていると。
南部 そうなんです。パソナがやろうとしているのは、淡路島で新しい産業をつくり、淡路島で新しい雇用を生もうということです。
今までは例えば、コールセンター業務など、東京でやっていた仕事を地方に持ってきていただけでした。東京で稼いで、東京で雇うべき人を北海道や沖縄で代替していたわけです。しかし、それでは天変地異で東京がダメになったら、北海道も沖縄もダメになるわけです。だから、われわれはそうではなくて、東京に頼らずに淡路島で新産業をつくろうと。だから、淡路島で農業から入っていったんです。
ー なるほど。それが2008年でしたね。
南部 はい。2008年に日本の農業の活性化と独立就農支援を行おうということで、『パソナチャレンジファームin淡路』を始めました。就農希望者を募って、参加者は3年間チャレンジファームで農業をしながら、栽培技術や農業経営のノウハウを学ぶという取り組みです。
もともと農業に注目したのは、2003年に秋田・大潟村での農業インターンプロジェクトがきっかけでした。定年退職者など、約60人を連れて、独立就農を目指そうという取り組みです。