BlackBerryは米国時間1月6日、高度なデジタルコックピットの開発をクラウド上で仮想化する、OEM向けのフレームワーク「QNX Cabin」を発表した。デジタルコックピットの開発を加速する、業界初の車載ソフトウェアソリューションとアピール。米ラスベガスで開催される「CES 2025」では、QNX Cabinの統合デモを実施する。
VirtIO(仮想化環境で効率的に入出力操作を行う仕組み)のオープン規格を採用した、業界初のクラウド対応SoC/ハードウェア非依存型デジタルコックピットリファレンスプラットフォーム。アジア太平洋地域を拠点とする主要OEMが、クラウドベースの開発作業における規模、コスト、時間の効率化を推進するために、このソリューションを活用する契約を締結したという。
BlackBerryでは、モジュール式の統合を可能にする同プラットフォームのアーキテクチャにより、「自動車メーカーは、パートナーおよびベンダーエコシステムからのソフトウェアの活用が容易になり、自社のニーズに応じた各種機能のカスタマイズや拡張を実現できる。こうした柔軟性によって、タッチ、音声、ジェスチャー操作などさまざまな入力方法のサポートが実現し、ユーザーとの対話性およびアクセシビリティが強化される」とアピールしている。
またクラウドベースの開発環境により、アーキテクトと開発者はソフトウェア開発の早い段階でセキュリティ対策を施す“シフトレフト”が可能になるとしており、「コードの1行1行をクラウド上で設計、テスト、改良後、本番のSoC(System on Chip)ハードウェアへと容易に移植できる」と説明。クラウド活用により、複数チームによる異なる拠点からシームレスに共同作業ができるほか、開発ワークフローの迅速化やプロセスの合理化、全体的な市場投入期間の短縮も実現可能とする。
同社はCES 2025において、QNX Cabinの統合デモを、Seeing MachinesやdSPACEといった複数のエコシステムパートナーとともに実施。前者は、QNX Cabinと自社のドライバーモニタリングシステム(DMS)テクノロジーとの統合を実現した初の企業で、ドライバーの眠気や注意力の低下を監視し、危険運転のリスクを軽減しながら、世界各国の新たな安全規制を遵守するというもの。
後者は、dSPACEのSIL(Software-in-the-Loop)ツールスイートが実現する、QNX Cabinでのシームレスなデータ再生の仕組みを紹介。OEMとティア1メーカーを対象とし、継続的インテグレーションと継続的デリバリー/デプロイメント(CI/CD)プロセスの改善に向け進行中の活動をサポートするというもので、開発中に特定されたさまざまな問題の再現とデバッグを支援し、高度な車両力学とトラフィックシミュレーションを作成することで、コーナーケースに対するテストを強化する。
一般的に、デジタルコックピットはSDV(Software Defined Vehicle、ソフトウェア定義型自動車)の車内体験の基礎となるもので、インフォテインメントシステムや、クライメートコントロール/コンフォートコントロール、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)などの先進運転支援システム、デジタル計器クラスタといったさまざまな機能を含んでいる。