東北大学は1月6日、世界の港湾ネットワークの位相、港湾同士の接続性、地球温暖化による海面上昇などを考慮して、津波が港湾および世界の港湾ネットワークにもたらすリスクを包括的に評価する手法を開発し、マニラ海溝で巨大地震・津波が発生する想定の下に分析を行ったところ、現在の海面水位では最大11港湾が、気候変動による海面上昇が生じた2100年時点では最大15港湾が被災し、東日本大震災時より経済損失が大きくなる可能性が示されたことを発表した。
同成果は、東北大 災害科学国際研究所(IRIDeS)のチュア・コンスタンス特任研究員、東北大大学院 工学研究科の大竹拓郎大学院生(研究当時)、同・鄭安棋大学院生(研究当時)、IRIDeSのサッパシー・アナワット准教授、同・今村文彦教授に加え、シンガポールや中国の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の自然災害の原因と影響を調査する研究を扱う学術誌「Npj Natural Hazards」に掲載された。
港湾は、海面水位の大きな変動に弱い。しかも、港湾の機能停止はその港湾だけの話では済まず、その港湾を航路に含むネットワーク全体に影響が及ぶ。東日本大震災の際には、津波によって港湾や船舶が最大で1兆8000億円に上る経済被害を受けたとされ、また港湾が機能停止したことで、1日に5100億円の海上貿易の損失が数か月間にわたって生じ続けたと推計されている(およそ3か月で76兆5000億円)。このように、1つの港湾が機能を停止することが港湾ネットワークに大きな損害をもたらすが、これまで津波が世界の港湾ネットワークにもたらすリスクの評価は十分に進んでいなかった。そこで研究チームは今回、津波が港湾および世界の港湾ネットワークに与えるリスクを包括的・定量的に評価する手法を開発したとする。