対立ではなく、協調と協力で
─ トランプ氏が米大統領に再選されたわけですが、分断・対立の時代をどう舵取りしますか。
柳井 トランプ氏が主張していることを仮に全て実行したとすれば、世界は破滅すると思いますし、米中双方が損をします。これだけグローバル経済になっている中で、今から元に戻って米国に製造業を回帰することはあり得ないですし、日本は日本の意見をきちんと言うようにならなければいけないと思います。
やはり、日本は日本で自主外交をやらないといけない。日米同盟は大事ですが、今は何か経済と政治を一体化しようとしていて、そういう考え方自体がよくない。それこそ協調と競争が大事ですから、米国についていくだけではなく、日本には自主独立の外交が求められるのではないかと思います。
─ 柳井さんは以前から「服は平和産業」と言っていますが、ある意味で、政治が対立している時だからこそ、経済人の役割が大事になりますね。
柳井 別に国民自体は対立していませんし、アジアがこれだけ成長する時代になっているのに、対立してその芽を摘むようなことがあってはいけない。やはり、対立ではなく、協調と競争で全世界が成長していくべきだと思います。
─ 本当ですね。柳井さんから見ていて、伸びる人材はどんな人ですか。
柳井 自分で考えて、会社の経営理念に共感し、その通り実行していく人が伸びていると思います。自分は何も努力せず、他の人や分配金に頼ってばかりではいけない。基本は自ら努力し、自分で考え、実行し、自分で稼いでいくと。そういうことが必要だと思っています。
─ 柳井さんが1984年にユニクロ1号店をオープンしてから40年が経ちましたけど、今はどういう思いですか。
柳井 やはり、挑戦しない限り、企業は生き残ることはできなくて、結構良い線いっていると思った瞬間に古くなっていくんです。今のオペレーションの繰り返しでは、やはり将来がないということですよね。現状に留まっていたら退化していくと思わないといけない。
われわれは2000年に約3000億円だった売上高が10年後に1兆円になり、次の10年で3兆円になりました。これはアジアが成長したからできたことですが、ここにたどり着くまでにはアジアも、米国も、欧州も最初に進出した時には全部失敗しました。でも、それにめげずにグローバル化していこうということで頑張ったから、何とか今の形があるんです。
当社のコーポレートステートメントは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」ですが、常に挑戦や変革をしていくことが大事であり、こういうことを実践していくことが大事だと思っています。