世のため人のためになる新たなものを創造したい
─ SBIホールディングス会長兼社長の北尾吉孝さん、分断を象徴した米大統領選でしたが、どう見ましたか。
北尾 今回の結果は、政治改革を求める国民の声の高まりが社会的・経済的大変革をもたらそうとしていることを象徴していると感じています。私自身も米選挙戦の最中は、大手メディアよりもSNS等から様々な情報を集め、それを基に分析していましたが、多くのメディアの主張とは違う結果になると見ていました。
トランプ氏は米国に溜まった不正を一掃しようとしているとされ、その不正に加担しているのがマスコミだという話にもなっています。日本の兵庫県知事選と同じような構図です。その意味で日米ともに今後、国民、特に若者の声が政治に反映される形になっていくと思います。
─ 北尾さんが起業して25年ですが、今後目指すものは?
北尾 私自身、世のため人のためになる新たなものを創造したいという欲望が強いのです。SBIグループを立ち上げた際にも、金融をインターネットの力で、より良いものに変えていこうという思いがありました。
そして23年には、SBI証券で国内株式の売買手数料を無料にする「ゼロ革命」を開始しました。
また銀行事業では、SBI新生銀行を買収しましたが、国民の血税である約3300億円の公的資金返済を実現するべく収益力の強化を進めています。この手枷・足枷を外し、今後の更なる躍進に繋げていきます。
─ 地方銀行との提携は地方創生にも重なりますね。
北尾 まさに地方創生の一環で、我々の経営資源を活用した連携強化を進めています。例えば、地銀が抱える大きな課題の1つは運用能力で、もう1つはシステムです。我々はここの改革に着手しました。
また、地域の経済・産業活動が縮小する状況下では、地方に新しい産業を誘致、あるいは起こしていかなければなりません。その意味でベンチャー投資も活発化しています。
─ その観点で進めてきた宮城県での半導体事業ですが、パートナー撤退後の見通しは?
北尾 半導体事業ではパートナー候補が撤退しましたが、これは天の助けだと思っています。というのも、半導体事業を深く研究していく中で、巨額の設備投資が必要な一方、日々技術革新が起こり、業界1位の企業ですら生き残れるかわからないような世界であることが、改めてよくわかったからです。
しかし、日本のモノづくりは半導体抜きには考えられません。委託生産の部分は弱くなりましたが、前工程、後工程など素材の部分はきちんと生き残っています。日本再生に向けて、今後も全力で取り組みたいと思っています。