3カ月連続で欧州3路線を開設
人も物もスムーズに動ける世界を
─ 国際社会では分断・対立が懸念される中でもインバウンドは活況です。2024年の航空業界をANAホールディングス会長の片野坂真哉さんはどう分析しますか。
片野坂 コロナ禍の3年前は非常に苦しかったのですが、今は景色が変わっています。特に国際線はインバウンドもアウトバウンドもビジネスが堅調です。日本企業のグローバル化やIR(投資家向け情報)で企業のトップが直接海外に足を運んでいるということだと思います。また、レジャーも好調で、24年のインバウンドも3500万人になると言われています。
─ 航空会社として、その増加するインバウンドと地方創生をどのように絡めていこうと考えていますか。
片野坂 我々にとって地方は非常に大事です。国内線は人口減の影響もありますが、機材を小型化して便数を維持するといった工夫をしていきます。また、地方を元気にするためには、地方空港に就航する外国の航空会社を増やしていかなければなりません。ただ、外国の航空会社を受け入れるためのグランドハンドリング(空港地上支援業務)や保安検査の人手不足という課題があります。これについて業界を挙げて対応していかなければならないと思っています。
─ 人手不足は企業の垣根を越えて連携する課題でもありますね。
片野坂 そう思います。ただその中でも当社には貨物があります。今後、熊本の半導体産業が集積するシリコンアイランドから半導体が輸出されると思うのですが、大型の貨物機を熊本空港に入れて輸送する態勢を整えています。「物流の2024年問題」がありますが、その解決策の一助として鉄道や船に加えて飛行機も活用しましょうと呼びかけているところです。
─ 産業界が一丸となっての解決策を提案していくと。
片野坂 そうですね。トラックの運転手が運べない荷物を代わりの輸送手段で運ぶ「陸海空のモーダルシフト」が新しいキーワードです。飛行機は運ぶ貨物の量は少ないですが、何といってもスピードが強みです。
─ 一方で国際情勢は米中対立が懸念されます。その中での航空会社の役割とは何ですか。
片野坂 私たちのビジネスは平和産業です。今でもロシアのウクライナ侵攻を受けてヨーロッパ路線はロシア上空を迂回しています。航空業の役割は人と物がスムーズに動けるようにすることです。ですから、新規路線も開設していきます。
20年に延期していた12月3日の羽田―ミラノ線を皮切りに、25年1月31日には羽田―ストックホルム線、2月12日には羽田―イスタンブール線を開設していきます。人も物も「つなぐ」ことに今後も力を入れていきたいと思っています。