「教育と医療福祉で勝負!」ソフトの海外輸出で成長を図る学研HD

海外売上高比率を50%に

「教育と医療福祉という日本の根幹を担う領域で社会に貢献してきた。今後はこの2つを海外に輸出していきたい」─。こう語るのは学研ホールディングス(HD)社長の宮原博昭氏。

 同社の業績が好調だ。2024年9月期決算では売上高が前期比13.1%増の1855億円で過去最高となった。医療福祉分野の伸張と24年4月からの小学校向け教科書改訂に伴う売上の増加、更には市進ホールディングスなどの連結化による。

 宮原氏が社長に就任した10年まで19期連続の減収が続いていたが、同氏は祖業の教育(学習参考書や児童書の出版、塾・学習教室)に加え、医療福祉(サービス付き高齢者向け住宅、保育園)を収益源とする2本柱体制を構築。1991年3月期は出版が売上高の7割以上を占めていたが、今では2割を切る。

 中でも同社の医療福祉は全体の5割近くを占めている。原動力となったのはサ高住。幼少期に小学生向けの学習雑誌『学習』と『科学』や『学研教室』に親しんだ人々が介護を求める世代となり、それまでに培ってきた学研のブランド力を活用したことが奏功。高齢者住宅の国内拠点は550カ所を超える。

 その宮原氏が次の成長市場として狙っているのが海外だ。まずは教育関連の事業を拡げ、次に医療福祉での展開を見据える。そこで同社はベトナムの教科書会社・DTPエデュケーションソリューションズを子会社化。23年に資本業務提携していたが、出資比率を35%から引き上げた。強みとする日本発の教育コンテンツのベトナムでの展開を進めるなどして連携を深める。

 同時に両事業にも磨きをかけている。累計会員数が35万人のオンライン英会話を手掛けるGlatsの株式100%化をはじめ、レアジョブとのパートナーシップも締結。高校生向けの英語教材に強い桐原書店の発行済み株式の過半数を取得し、グループ会社化している。

 医療福祉でもサ高住を展開するグランユニライフケアサービスを買収した上に、ひょうま(島根県益田市)から認知症高齢者グループホーム6事業所を、講談社パルから「講談社こども教室」事業をそれぞれ譲り受けた。

「30年までに海外売上高比率を50%に拡大させたい」と意気込む宮原氏。足元の海外比率は5〜10%程度にとどまり、公文教育研究会の教室数では大幅に後れを取る。ライバルとの競争がある中で、教育と医療福祉というソフト輸出で海外での存在感を高める。

北川正恭・早稲田大学名誉教授「民主主義を守り抜くことこそ、日本の果たすべき役割!」