生保、介護、保育で「安心の多面体」実現を
─ 日本生命保険社長の清水博さん、米国でトランプ大統領が誕生する中、政策が及ぼす影響をどう見ますか。
清水 トランプ大統領の政策で、世界の政治、経済、金融市場が大きく影響を受けることは間違いないと思います。問題はどの方向に行くかです。
米国における減税と規制緩和はビジネスと景気にプラスですが、関税引き上げはインフレとなって実質所得を下げますし、不法移民の送還は人手不足に拍車をかけます。
このプラスとマイナスが短期的、中長期にどう影響を及ぼすかはわかりませんから、政策を注視しながら、我々のシナリオを立て、修正しながら事業を行うことに尽きます。
─ 2026年度までの中期経営計画で「安心の多面体」という言葉を掲げましたね。改めて、目指すものは?
清水 生命保険事業が、日本生命グループの中心であることは変わりません。アセットマネジメント、介護、保育など他の事業を拡大すればするほど、生命保険事業は一層重要になっていくと思います。
生命保険事業をさらに強力にする求心力、事業の多角化を推進する遠心力という2つの力で「安心の多面体」という経営方針を実現していきます。
また、地域社会を考えることの重要性が高まっています。地域に根ざした課題に焦点を当て、支社主導で生命保険事業の推進、社会課題の解決に注力していく必要があります。「安心の多面体」を実現する上で生保、介護、保育を有機的に連携させながら安心をお届けする時に、地域という要素は大きくなります。
─ DX時代の営業職員の役割をどう考えますか。
清水 今は、営業職員が対面とデジタルを使いこなすのは当たり前になっています。これによって、活動の効率化と標準化が進んでいます。
もう1つ、がん検診受診活動のように地域社会に貢献するという使命を持って活動しています。これこそが、今後の営業職員チャネルのあるべき姿だということが見えてきたと感じています。
─ 今、社内にどんな言葉を投げかけていますか。
清水 「人は力、人が全て」ということ、そして中計のキャッチフレーズである「期待を超える安心を、より多くのお客様へ」を強く伝えています。
つまり、日本生命グループが「こういうサービスを提供するだろう」と考えられていることを超えたサービスを提供したいのです。
この中計では積極的な投資で成長を加速させます。それによって足元で約7000億円の基礎利益を、35年に約1兆4000億円まで増加させることを目指していきます。