CO2削減、グリーン化で競争力あるコンビナートを
─ 三井化学社長の橋本修さん、米国のトランプ大統領就任で脱炭素の動きが停滞する懸念も言われる中ですが、どういうスタンスで臨みますか。
橋本 我々化学業界としては、CO2削減などグリーン化の歩みがどうなるかに注目しています。足元でも、水素に重点を置いていた欧州や日本国内では現実的にコストを考えてアンモニアに着目したり、電気自動車(EV)にしても撤退したり、事業を遅らせる動きが出るなど、流れが変わり始めています。現実の規制とのギャップも含めて、トランプ大統領のスタンスを注視していきたいと思います。
高関税の話もありますが、2016年の第1期政権の時に、サプライチェーンをどう構築すべきかについては、ある程度学習したと考えています。その経験を生かして、海外事業の配分を考えていきたいと思います。
─ 化学製品の市況は中国の過剰生産もあって低迷していますが25年の見通しは?
橋本 中国のオーバーキャパシティ問題は、今後3、4年続くと見ています。ただ、石油化学自体、アジアでは年4%ほどの成長が続いていますから、どこかでバランスすると思います。
その時に備えて、国内のコンビナートの競争力を付けておかなければなりませんし、それは併せて経済安全保障の視点を持って進めていく必要があると考えています。
─ 国内に一定程度の基盤が必要だと。
橋本 ええ。我々が生産している石油化学製品は半導体、自動車、食品包装、医療機器などに使用されており、国内で一定程度生産していくことが必要です。全てをやめて輸入した時、そこで価格を上げられたら何もできなくなります。先を見越して事業強化していくことが重要になります。お客様、経済安全保障、投資効率、シナジーを見て、何を最終的に残すのか決め、最適化していく必要があります。
さらにその先に、CO2削減、グリーン化で先進的なコンビナートを構築することが重要です。石化再編は目的ではなく海外のコンビナートに対する競争力を確保する手段です。
─ 競争力の高いスペシャリティ分野で成長すると掲げていますが、今後の取り組みは?
橋本 ヘルスケア、モビリティ、ICTはグローバルに競争力のある形にしたいと考えています。この3分野は19年からの5年間で、年平均12%利益成長しています。今後さらに成長を加速するために、差別化でき、かつ伸びる分野に集中投資すると同時に、成長領域の中でコモディティ化するケースもありますから、ポートフォリオ入れ替えも含めて検討し、利益成長を加速させていきます。