どう脱皮するか?
2025年(令和7年)は巳年。巳は干支で蛇を表す。ヘビは"脱皮"して、成長していく生き物。それにかこつければ、環境激変の今、わたしたちも新しい環境になじむため、どう脱皮していくのか。また、どう脱皮していけるのかが問われているのだと思う。
変化力が問われる時代である。人類そのものが地球上に現れたのが約500万年前といわれ、環境変化の中で人類は変化し、進化し続けてきた。
太陽系という宇宙の中で、『生命』があるのは地球だけといわれる。その生命は約35億年前、海中で誕生。
やがて、生き物のバクテリアが登場し、太陽光をエネルギーに、光合成が行われ、酸素を生み出すようになった。こうして、生き物が存在し続けられるような環境が整えられるようになった。
こうした生命の起源や環境適応の歴史をたどる時、『変化』はわたしたちが生き続けるための遺伝子として組み込まれていることに気づく。
個人(個体)の生命には期限(寿命)がある。しかし、人類という単位でいえば、遺伝子を次の世代に伝え続けることで生き続けられる。
その遺伝を担うのがRNA(リボ核酸)で、RNAは遺伝子情報を次世代に伝えたり、生命を構成するタンパク質を形づくる機能を持つとされる。
そうした生物学的な視点はともかく、わたしたちはどこから生まれ、現在をどう生き抜き、そして次世代に何を託していくのかという使命を抱えているということ。
過去から現在、そして未来へとどう生命をつないでいくかという命題である。
明治維新から157年の今
日本の近代化の歴史で言えば、2025年は明治維新(1868)から157年ということになる。
泰平の世を謳歌していた江戸時代の約270年間、島国の日本は鎖国政策を取ってきた。
しかし、オランダやポルトガル、イギリスなど欧州の国々は通商を求め、宣教師をはじめ、いろいろな人が訪ねてくる。そして、米国のペリー艦隊が江戸港の入り口、浦賀にやってくる。
明治維新の10年前のことである。鎖国を取る江戸幕府は開国を断る態度で応じたが、2度目のペリー来航で、通商条約を結ばざるを得なくなった。それ以前には、北方からロシア艦隊が何度も日本を窺い続けていた。
下手をすれば、日本は欧米列強の植民地になるという危機感もあって、明治維新が行われた。幕藩体制を倒し、近代化を図るための新政府樹立である。
薩摩藩の西郷隆盛や大久保利通、長州藩の伊藤博文など下級武士ながら、志のある人物たちが危機感を持って行動。『富国強兵』、『殖産興業』などのスローガンの下、新しい国づくりに当時のリーダーは奔走した。
西郷隆盛の生き方に・・・
変革は旧来の秩序をこわし、新しい体制を構築すること。当然、旧秩序の下で生きてきた人たちには、不平・不満がつのる。その象徴が明治10年(1877)の『西南の役』として爆発。
この時、下野していた西郷隆盛は官軍と一戦を交えるが、自らは不平・不満を持つ薩軍と共に沈んでいくという覚悟を持っていた。そして、故郷・鹿児島の城山で散る。
自らの死と引き換えに、新しい世を生み出すことを若い人たちに託すという西郷の生き方は司馬遼太郎の名著『翔ぶが如く』にもくわしい。 『敬天愛人』ー。公(パブリック)のために、どう生きるかを追求し続けた西郷のリーダーとしての器量の大きさである。
"西南の役"の後に建てられた西郷神社は故郷の鹿児島の他に、庄内藩の治世下にあった山形県酒田市にもある。
敵、味方と分断しがちな今
なぜ、庄内の地に西郷神社があるのか?
江戸末期、幕府方の庄内藩(今の鶴岡市と酒田市)は官軍(薩長などの新政府軍)と対峙。そして官軍に敗れるが、江戸から総指揮を取っていた西郷は現場の指揮官に、庄内藩が降伏した時に、相手の立場にも配慮し、いやしくも横柄な態度を取らないようにと厳命した。
この寛大な措置に、庄内藩主や士族たちは"感動"し、そうした西郷の生き方・考え方はどこから来るのかと、子弟を鹿児島に送り、その思想を学ばせた。
"西南の役"時、若き庄内藩士たちは西郷軍に参加。これを見て、西郷は、「君たちは庄内に戻りなさい」と説くが、藩士たちは西郷と運命を共にすることを選択。
散華した若き庄内藩士たちは今、桜島を望む墓地に西郷と共に眠る。生き残った庄内藩士たちがまとめたのが『南州翁遺訓』だ。
敵と味方と分断しがちな昨今、考えさせられる西郷の生き方だ。
藤沢久美さんの提言
2025年1月のD・トランプ氏の米大統領正式就任を前に、トランプ外交が動き出している。
地政学リスクが高まる世界情勢の中でどう生きるか? 「米中対立がとかく言われて、中国を誹謗する方向で物事を捉えがちですが、EU(欧州連合)などを見ていると、しっかりと中国とビジネスをやっている。日本もどういう立ち位置で臨んでいくかということを考えなければいけない」
国際社会経済研究所理事長の藤沢久美さんは「日本の立ち位置が大事」と次のように語る。
「デジタル革命が進むことによって、今まで武器と民生品は全く別だったんだけれども、民間で使うものがいつでも武器転用できるようになってきました。誰が信頼できる国かということを明確にしないと、輸出先、輸入先というのも非常に厳しくなってくる。今まで遠い所にあった地政学が、産業界の人全員にとって、非常に重要なものになってきたというのが現状だと思います」
藤沢さんがつづける。
「加えて、しばらくないと思っていた戦争が、世界で起こり始めているので、やはり戦争は近くで起こるかもしれないという中で、経営者も考えていかないといけない。社員をどう守るかとか、サプライチェーンをどうするかとか。自然災害も結構ありますしね。経営者にとってリスクを考える、リスクにどう備えるか、非常に難しい時代に入ります」
そして、生成AI(人工知能)やロボットと人間の関係。人型ロボットをつくることは、「人間に対しての冒涜にならないか」という指摘もある。
「ええ、社会とは何か、地球とは何か、人間とは何かを考えさせられる年ですね」と藤沢さんは語り、「ミッション(使命)、ビジョン(将来像)、そしてバリュー(価値)を明確にする企業が生き抜けるのだと思います」と藤沢さん。
根源的な事を考えさせられる2025年である。