【2025年をどう占いますか?】答える人 三菱総合研究所理事長・小宮山宏

日本は「資源自給国家」になれる!

 ─ 三菱総合研究所理事長の小宮山宏さんには、日本最大のシンクタンクとしての日本再生への道筋をお願いします。

 小宮山 今後は米中の対立が基調になると思います。その中で日本は素材や部材といった非常に強いものづくり力を活用して米中両国と付き合っていかなければならないと思います。半導体に使うレジスト(基板の表面に塗られる緑色のインク)やケミカル・メカニカルポリシング(化学的機械研磨)など日本が強いものがたくさんあります。

 こういった技術を他国が自分たちで開発しようとすると、ものすごく手間やコストがかかり、時間もかかります。そうであるならば、多少高価でも日本の製品の方が便利で安いから買おうということになる。ですから、日本は外に売っていくべきです。

 ─ 潜在力はあると。

 小宮山 はい。世界第3位の経済の国が、そんなに弱いはずがありません。ただ、ものづくりの形が昔と違っています。今までと違った高機能な領域のものづくりに変わってきているわけです。そういったものは一朝一夕ではできません。

 ─ 世界が分断・分裂の時代にある中で、小宮山先生はかねてより「プラチナ構想ネットワーク」を展開しています。この精神は「つなぐ」ですか。

 小宮山 そうです。今は5つの産業イニシアティブを作ろうと動いています。まずは「プラチナ森林産業イニシアティブ」を作り、自治体なども含めて80を超える団体が参加しています。このイニシアティブは脱炭素の実現に向けて森林資源を活用し、バイオマス化学や木造都市の実現に向けて取り組んでいます。

 バイオマス化学と木造都市も易しくはありませんが、上流の林業が一番難しいのです。需要で供給を引っ張るという発想です。実際、サステナビリティの分野に投資をしたいという金融機関など様々な企業が参加してくれています。さらに次は「プラチナ再生可能エネルギー産業イニシアティブ」を立ち上げる予定です。

 ─ それぞれをつなぐためのプラットフォームづくりだと。

 小宮山 ええ。ですから、このイニシアティブでも様々なアイデアが生まれています。例えば駐車場の屋根にソーラーパネルを張れば、3年ぐらいでペイバックできると。ただ、建蔽(けんぺい)率の問題がある。でも、ルールさえ変えればできるわけです。

 他にも、畑の上にソーラーパネルを建てれば、農産物の収入に加えて売電収入も得られるといった取り組みも始まっています。食料と電力の自給が可能になるわけです。日本で一番大きい金山は都市鉱山です。金属資源はなくならないので社会に飽和したら回せば足りるのです。つまり、日本は「資源自給国家」になれるということです。

【社論】日本の立ち位置をどう定め、潜在力をどう掘り起こすか