【2025年をどう占いますか?】答える人 森トラスト社長・伊達美和子

唯一無二の場所に唯一無二の建物をつくる

 ─ 森トラスト社長の伊達美和子さん、再開発を手掛ける中で25年のオフィス市況をどう予想しますか。

 伊達 24年はオフィス回帰が着実に進んだ年でした。都心は平均募集賃料が9カ月上昇し続けており、空室率が低下し、かなり環境が良くなってきていると思います。また、新築オフィスの供給ラッシュもありますが、こちらも埋まりつつある状況です。

 この背景にあるのが、企業のオフィス回帰です。やはり、対面の方がより業務効率が上がり、新しい価値が生まれるということを実感しているのではないでしょうか。企業はハイブリッドな働き方を志向しつつも、今後も出社率が上がる可能性が高いということで、増床の計画を立てているという声も聞こえてきます。ですから、今後は本格的にオフィス需要が戻ってくると思います。

 ─ やはり、人は対話や会話が大事だということですね。

 伊達 ええ。テレワークやオンライン会議が浸透したことで、生産性や利便性が上がったと思います。しかし、人が集まれる空間があると、そこでコミュニティが生まれます。対面で人と人との接点を持つことによって、創造性や将来性、拡張性が生まれてくるのではないかと思います。

 当社の大規模複合開発プロジェクト「東京ワールドゲート赤坂」は25年の竣工ですが、ここにはラウンジスペースとテラススペースがあり、ちょっとしたミーティングや、ゆっくりくつろぐことのできる空間を用意しています。気分転換もしつつ、人が集まりやすくなるスペースを用意しているのも大きな特徴です。

 また、この物件では日本初進出となるラグジュアリーホテル「1 Hotel Tokyo」が開業します。自然環境をシームレスにつなげることで、世界の旅行者へおもてなしします。緑豊かな空間や日本古来の大谷石を組み合わせたエントランスなど、サステナビリティという発想でメッセージ性の高いホテルになる予定です。

 ─ 一方、24年10月には長野・軽井沢で万平ホテルをリニューアルオープンしましたが、地方振興にはどう関わっていきますか。

 伊達 インバウンドが増えていることは非常にポジティブですが、今後は必ず国際競争が起きてきます。日本を選んでもらうためには、個性的で特徴のある商品をつくることが魅力度を増すことになると思います。私どもは唯一無二の場所に、唯一無二の建物をつくり、付加価値をつけていくことが重要と考えており、私ども自身も常に変化と進化をしなければならないと思っています。