「貯蓄から投資」の大きな流れをつくる時
─ 大和証券グループ本社会長の中田誠司さん、混沌とした状況下ですが25年の世界経済の展望を聞かせてください。
中田 日米ともに予見が難しい政治状況があり、ボラティリティの高い年になることが想定されますが、世界経済全体は堅調な見通しです。
24年10月のIMF(国際通貨基金)の世界経済予測では24年、25年ともに世界全体は3.2%の成長という見通しです。25年は米国が2.2%、日本が1.1%、新興国が4.2%というのが前提です。
─ 米経済の見通しは?
中田 トランプ政権の政策では、25年末までの個人所得減税の恒久化、法人税引き下げ、金融規制の緩和等は、企業活動にはプラスです。自社株買いの増加も勘案すると、ニューヨークダウは高値で4万9000ドル、SP500が6700ポイントまで上昇する可能性があります。
─ 日本も政治の先行きが不透明ですが株価の動向は?
中田 少数与党の政権下では「バラマキ型」になりやすく、財政規律を考えると良し悪しですが、個人消費を支える要因にはなるでしょう。
また米国の過度な金利引き下げが遠のいた観測もあり、日本では都議選や参院選も控え、日銀の金融政策も微妙なバランスを取らざるを得ないとすると、過度な円高は想定しづらく、為替が日本企業の業績をサポートするでしょう。
日本の上場企業は5年連続で最高益を更新する見通しで、25年度の日経平均ベースのEPS(1株当たり純利益)は当社の試算では2544円、これにPER17.5倍をかけると4万4520円となり、日経平均は4万5000円までは見通せます。
─ 政府が「資産運用立国」を打ち出してきましたが、ここまでの手応えはどうですか。
中田 新NISA(少額投資非課税制度)導入もあって「貯蓄から投資へ」の流れが進み出した手応えがあり、これを継続しなければいけません。米国では税制優遇制度を導入後、40年から50年かけて家計における運用資産が増えました。日本でも20年から30年かけて「貯蓄から投資へ」の大きな流れを作っていくことが必要です。
─ 日本でもM&Aが増加傾向ですがどう見ますか。
中田 日本でもコーポレートガバナンス改革、経済産業省の「企業買収における行動指針」を受けてMBO(経営者による買収)を含むM&Aは今後も増加するでしょう。ただ、日米の株主権の違いには警鐘を鳴らしたい。米国に比べ、日本の法律は取締役の選任・解任を含む株主提案のハードルが低く、企業に対してアクションを起こしやすい。短絡的な株主還元だけが追求されないように、法整備も併せて進める必要があります。