ホンダと日産が経営統合協議へ 世界3位に浮上も課題は山積

ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入った。持ち株会社を設立し、傘下に両社がぶら下がる形で調整する。将来は日産が筆頭株主となっている三菱自動車の合流も視野に入る。

 ホンダと日産は24年3月に自動車の電動化などの分野で戦略的パートナーシップの検討を始める覚書を結ぶなど関係が強まっていた。当時、ホンダ社長の三部敏弘氏は日産との資本提携の可能性について「現時点でそういった話はしていないが、今後の可能性は別に否定するものではない」と語っていた。

 電動化とSDV化(ソフトウエア定義車両)で世界の自動車産業は大転換期を迎えている。その中で米テスラや中国勢など電気自動車(EV)メーカーが存在力を高めており、「旧来のビジネスモデルのままでは生き残れない」(自動車メーカー幹部)環境へと変化。今回の3社が集約されれば、年間販売台数が800万台レベルの世界第3位グループに浮上する。

 あるアナリストは「軽自動車や小型車に強いホンダと中・大型車に強い日産のタッグによるシナジー効果はある」と評価する。実は両社を巡っては19年にも経済産業省が主導して経営統合を図ったことがあった。

 苦境に陥っていた日産の筆頭株主・仏ルノーが同社との統合を画策していたからだ。計画は白紙に戻ったが、ここにきて日産の業績が再び低迷。役員人事の変更や人員削減・生産能力の削減などに動き始めている。

 なぜ今ここで統合なのかー。関係者によると、水面下では日産に対し、「台湾の鴻海精密工業を中核とするフォックスコンや中国の新興EVメーカーが触手を伸ばしている」とされる。そのため「ホンダが日産を救済するような形だ」との声もある。

 ただ、そのホンダも米国はハイブリッド車が好調だが、中国では工場閉鎖など苦戦中。両社は米国と中国を主力市場としており、車種の調整など「簡単にはいかない」(前出のアナリスト)。更にホンダには稼ぎ頭の二輪車事業もある。両社の文化が融和するかどうかは未知数だ。

 次世代車を巡ってはIT企業などの異業種との競争にもなる。両社がどこまで危機感の共有を図れるかがポイントになる。