経団連会長に日本生命・筒井義信氏、金融業界から初の選出

「経済のソフト化」の中で

 時代の変化の波が経団連にも押し寄せているー。

 現在の十倉雅和氏(住友化学会長)の後任となる経団連の次期会長に日本生命保険会長の筒井義信氏の就任が固まった。2025年1月の正副会長会議で人事案を提示、25年5月29日の定時総会を経て就任する予定。

 過去15人の経団連会長のうち、非製造業は2人(経団連事務局の植村甲午郎氏、東京電力の平岩外四氏)で筒井氏が3人目。金融業界からは初の就任。

 今回、製造業出身者ではソニーグループ会長の吉田憲一郎氏、日立製作所会長の東原敏昭氏、日本製鉄会長の橋本英二氏らの名前も取り沙汰されたが、十倉氏が選んだのは筒井氏だった。

 十倉氏は24年12月17日、「人物本位で選んだ」、「製造業が果たす役割は大きいが、こだわるべきではない」と筒井氏を選任した理由を説明した。

 今は時価総額ランキングでも非製造業企業の健闘が目立ち、「経済のソフト化」の流れがある。日本生命は非上場だが、金融というソフト産業の一角。

 また、日本商工会議所で初の商社出身会頭・小林健氏が就くなど、経済団体の製造業優先の不文律がなくなりつつあった。

 十倉氏は前会長の中西宏明氏(当時日立製作所会長)の体調不良による任期途中での退任で21年に就任。この間、「賃金と物価の好循環」実現のための賃上げに向けた旗振りや、原子力発電の活用を含めたエネルギー政策への提言などを進め、日本再生を軌道に乗せることに尽力。

 筒井氏は1954年1月兵庫県生まれ。77年京都大学経済学部卒業後、日本生命入社。11年に社長、18年に会長。経団連では23年から副会長を務め、行政改革推進委員長として黒衣に徹してきた。24年には脱炭素を推進するGX推進機構の初代理事長にも就いていた。社長就任時に「真に最大・最優、信頼度抜群の生命保険会社に成る」を掲げ、質、量両面の成長を図ってきた。

 経団連は12月9日にビジョン「FUTURE DESIGN 2040」を発表。柱となる6つの施策のうち、全世代型社会保障、環境・エネルギー、地域経済社会はいずれも日生の注力分野。筒井氏は経団連会長としても、その実現に向け汗をかくことになる。