2024年10月の衆院選で与党が過半数を割り込んだため、あらゆる予算や法律を国会で成立させるためには与野党間での協議が必須な状況になっている。
社会保障政策では、5年に1度の公的年金の制度改革関連法案、25年度予算案では医薬品の公定価格「薬価」の改定実施の可否などが焦点となる見通し。厚生労働省幹部は「法案も予算もできるだけ多くの政党の賛同を得る形にしたい。しかし、具体的な枠組みが決まっておらず、年金改革法案に関しては決着が年明けにずれ込むだろう」との認識を示している。
年金制度改革は、少子高齢化に影響で長期にわたって目減りが続く将来世代の基礎年金の給付水準を厚生年金の積立金と国費で底上げする案や、パートら短時間労働者への厚生年金の加入拡大が柱。
基礎年金底上げ案は国費を追加投入するため、30年代からの増税が見込まれ、立憲民主党は「方向性は理解できるが、簡単に賛成できない」(幹部)と難色を示す。厚生年金に加入できるパート労働者の拡大案は、企業の人手不足解消が狙いだが、加入拡大で厚生年金の保険料を半分する負担する中小企業の負担増が課題だ。
与党が最も重要視するのは国民民主党との協議だ。国民民主はまだ年金制度改革で具体的なスタンスは見せていないが、同党幹部は「政府の提出法案に異論があれば修正案を国会提出するかもしれない」と話す。
一方、国民民主は薬価制度改革には大きな関心を見せ、12月6日には同党の浜口誠政調会長や役職停止中の玉木雄一郎代表らが石破茂首相を首相官邸に訪ね、政府が薬価を毎年引き下げる仕組みの廃止を求めた。
薬価は従来、診療報酬とともに原則2年に1回、市場実勢価格に応じてマイナス改定されてきた。しかし政府は医療費抑制のため、21年度から毎年改定を実施。浜口氏は「毎年改定が製薬業界の収益を圧迫し、医薬品の供給不安につながっている」と指摘している。